
産前・産後のセルフケアにはさまざまなものがあります。
乳頭ケアも、ママの体を整えるための大切なケアのひとつです。
この記事では、母乳育児を考えている方や、授乳に向けて準備をしておきたい方に向けて、乳頭マッサージについてわかりやすくご紹介します。
乳頭マッサージとは
乳頭マッサージ(おっぱいマッサージ/おっぱいケア)とは、授乳時に起こりやすいトラブルをできるだけ防ぐために行うケアのことです。
初めて出産される方の中には、「出産すれば自然に母乳が出るのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん個人差はありますが、授乳がスムーズにいくまでに時間がかかることもあり、乳首が硬く赤ちゃんが吸いにくい場合もあります。
そのため、妊娠経過が順調な場合には、医師や助産師と相談しながら乳頭ケアを取り入れることがあります。
無理のない範囲で準備をしておくことで、産後の授乳が少しスムーズになる可能性があります。
妊娠中に乳頭マッサージを行う目的

乳頭マッサージは、産後の授乳を少しでも始めやすくするために、必要に応じて取り入れるケアのひとつです。
主な目的は、次のような点です。
- 赤ちゃんがくわえやすい状態に整える
- 乳頭や乳輪をやわらかく保つ
- 授乳時のトラブルを予防する
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ吸う力が強くありません。そのため、乳首が硬いとうまく吸いつけないことがあります。あらかじめ乳輪や乳頭をやわらかく保っておくことで、赤ちゃんがくわえやすくなる可能性があります。
赤ちゃんは乳首、乳輪部分を通常の1.5倍くらいに伸ばしながら吸います。自分の乳首は伸びるかどうか確かめてみましょう。耳たぶくらい柔らかいと、伸びも良く、痛みもありません。
母乳の分泌量には個人差があり、乳頭マッサージによって必ず母乳が増えるわけではありませんが、無理のない範囲でケアを行うことで、授乳をスムーズに始められる可能性があります。
妊娠経過が順調な場合に、医師や助産師と相談しながら取り入れることが大切です。
母乳育児のメリットは?
近年は粉ミルクの品質も向上し、赤ちゃんを育てる方法はさまざまになっています。母乳・ミルクいずれを選んでも、赤ちゃんは健やかに成長することができます。
一方で、母乳育児だからこそ期待できるメリットもあります。
- 母乳を通して、母親の免疫物質を赤ちゃんに届けることができる(赤ちゃんの免疫力の向上が期待できる)
- 赤ちゃんにとって、消化・吸収しやすい成分でできている
- 授乳というふれあいの時間が、親子のコミュニケーションや愛着形成につながる
- 授乳時に分泌されるオキシトシンにより、母体の回復を促進する効果が期待できる
もちろん、ミルクでも赤ちゃんは十分に育ちます。大切なのは、ママと赤ちゃんにとって無理のない方法を選ぶことです。
母乳の分泌に大きな問題がなく、ママが「やってみたい」と感じられる場合には、母乳育児を取り入れてみるのもひとつの選択肢です。
乳頭マッサージはいつから始めるの?
妊娠16週頃から乳首、乳輪の圧迫マッサージを始め、赤ちゃんが吸いやすいように準備しましょう。
乳頭への刺激によって「オキシトシン」というホルモンが分泌されることがあり、このホルモンは子宮の収縮にも関わっています。そのため、赤ちゃんが十分に育った時期に、体調が安定しているときに行うのが安心です。
一方で、赤ちゃんの発育がゆっくりといわれている場合や、切迫早産の指摘がある場合、お腹の張りや出血があるときなどは、控えたほうがよいこともあります。
妊娠経過に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師や助産師に相談してから行いましょう。
また、乳頭マッサージとあわせて、日常生活でも乳頭や乳房に負担をかけないよう、できるだけブラジャーを着けずに過ごし、着用する場合はワイヤーのないものなど、締め付けの少ないものを選ぶのもおすすめです。
乳房や乳首を圧迫しないように過ごすことで、赤ちゃんが吸いやすい状態へと整いやすくなります。
乳頭マッサージをする頻度とタイミング
産前は、体調が安定している場合に、1日1回程度を目安に行うのがおすすめです。毎日決まった時間に行うと習慣にしやすいでしょう。
入浴中や入浴後など、体が温まっているタイミングに行うと、リラックスした状態で取り入れやすくなります。強い刺激は必要ありませんので、体調と相談しながら無理のない範囲で行いましょう。
産後は、授乳前に軽く乳頭をほぐすことで、赤ちゃんがくわえやすくなることがあります。ただし、毎回必ず行う必要はなく、乳頭の状態や授乳の様子に合わせて調整することが大切です。
マッサージ後は、分泌物がある場合はやさしく洗い流し、こすりすぎないようにしましょう。
妊娠中や産後にできる乳頭マッサージのやり方

妊娠中や産後に無理のない範囲で乳頭ケアを行うことで、授乳時のトラブルをやわらげることが期待されます。
ここでは、ご自宅で取り入れやすい方法をご紹介します。
【準備】手指を清潔にする
乳頭マッサージを行う前は、爪を短く整え、手を清潔にしておきましょう。
乳頭周辺の皮膚は薄くデリケートです。爪が伸びていると、思わぬ傷につながることがあります。
産後は特に衛生面への配慮が大切です。授乳前に行う場合は、手をしっかり洗ってから行いましょう。
1.オイルを塗布する
乾燥した状態で行うと、摩擦によって皮膚トラブルが起こることがあります。
必要に応じて、ベビーオイルや保湿用オイルを少量手のひらで温め、やさしくなじませましょう。
※授乳前に行う場合は、赤ちゃんの口に入らないよう、使用するオイルの種類や拭き取りに注意してください
2. 乳頭をやさしくつまんで圧迫する
乳首をつけ根から軽く引っ張り3秒ほど圧迫します。強く刺激する必要はありません。
妊娠後期や産後には、黄色っぽい分泌液(初乳)が出ることがありますが、少量であれば心配はいりません。
3.乳頭を縦横にやさしく動かす
縦方向や横方向にもみずらします。強く引っ張る必要はありません。
痛みや違和感がある場合は、無理をせず中止してください。
乳頭マッサージをする際の注意点
乳頭マッサージは、やさしく行えば授乳準備のひとつになりますが、思わぬトラブルにつながることがあります。行う際には、次の点に注意しましょう。
強い刺激は避ける
乳頭マッサージを行う際に無理に力をかけると、乳頭の皮膚を傷つけてしまうことがあります。妊娠中は皮膚がデリケートになっていることもあるため、必ず「痛くない程度」の力で行いましょう。
痛みや違和感がある場合は、すぐに中止してください。
体調が安定しているときに行う
次のような場合は、自己判断で行わず、医師や助産師に相談してください。
- 妊娠37週未満の場合
- お腹の張りを感じているとき
- 出血があるとき
- 切迫早産などの指摘を受けている場合
- 医師から控えるよう指示されている場合
乳頭への刺激によって分泌されるオキシトシンは、子宮の収縮に関わるホルモンです。そのため、妊娠経過によっては注意が必要なことがあります。
お腹の張り止めの薬を飲んでいる時はやめましょう。
帝王切開を予定している場合でも、妊娠経過によって対応は異なりますので、必ず主治医に確認しましょう。
【合わせて知っておきたい】D-MER(不快性射乳反射)とは
乳頭マッサージや授乳をしていると、「乳頭への刺激がなんとなく不快に感じる」「理由は分からないけれど気持ちが沈む」といった感覚を抱く方もいらっしゃいます。
こうした症状は、D-MER(不快性射乳反射)と呼ばれる状態の可能性があります。
D-MERとは、授乳や射乳反射にともなって、一時的に次のような感情や身体症状があらわれることを指します。
- 不安感
- 不快感
- 胃のムカムカ
- 緊張感
- イライラ など
原因ははっきりとは解明されていませんが、授乳時にホルモンのひとつである「ドーパミン」が一時的に低下することが関係しているのではないかと考えられています。
ドーパミンは、気分や意欲に関わるホルモンのひとつです。その分泌が急激に変化することで、一時的に不安や不快感を感じやすくなるという説があります。
D-MERの症状には個人差があり、数か月で落ち着く方もいれば、授乳期間中続く方もいます。なかには、そのつらさからミルク育児へ移行する方もいらっしゃいます。
「自分もそうかもしれない」と感じた場合は、決して我慢せず、医師や助産師に相談してみてください。
乳頭マッサージに関するよくある質問
最後に、乳頭マッサージについてよくいただくご質問にお答えします。
扁平乳頭や陥没乳頭でもマッサージはした方がいいの?
扁平乳頭(乳頭が平らな形状)や陥没乳頭(乳頭が乳輪の中に入り込んでいる状態)の場合でも、ケアを行うことで授乳がしやすくなる可能性があります。
形状によって適した方法が異なりますので、自己判断で強く刺激するのではなく、医師や助産師に相談しながら行うことが大切です。
乳頭マッサージをすれば必ず母乳育児ができるの?
乳頭ケアは授乳準備のひとつですが、母乳の分泌量には個人差があり、必ずしも母乳育児がうまくいくことを保証するものではありません。
近年の粉ミルクは安全性や栄養面も十分に配慮されています。母乳育児に強いプレッシャーを感じることが、かえってストレスにつながる場合もあります。
「できる範囲で取り組む」という気持ちで、無理のない方法を選びましょう。
乳頭マッサージにおすすめのオイルは?
マッサージの際は、保湿目的でオイルを使用することがあります。
乳頭マッサージでは、次のようなオイルが使用されることがあります。
- カレンデュラオイル
- スイートアーモンドオイル
- ホホバオイル
- オリーブオイル
- 馬油
ただし、すべての方に合うとは限りません。使用する際は、できるだけ無添加で刺激の少ない製品を選び、事前にパッチテストを行いましょう。
産後に使用する場合は、赤ちゃんの口に入る可能性もあるため、成分や安全性を確認し、必要に応じて授乳前にやさしく拭き取ることが大切です。
肌に赤みやかゆみなどの異常が出た場合は、すぐに使用を中止してください。不安がある場合は、医師や助産師に相談すると安心です。
黄色い分泌液が出てきたけど大丈夫?
妊娠後期に黄色っぽい分泌液が出ることがあります。これは初乳である可能性が高く、少量であれば心配はいりません。
マッサージ後はやさしく拭き取り、強くこすらないようにしましょう。
マッサージで初乳が減ってしまうことはある?
初乳は、通常の母乳よりも栄養価が高く、赤ちゃんにとって大切な成分が豊富に含まれているといわれています。
そのため、産前から乳頭マッサージをして分泌液が出ると、「赤ちゃんのための初乳が減ってしまうのでは?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、通常の範囲でやさしくケアをしていて少量の分泌液が出た場合でも、それによって初乳が不足してしまう可能性は低いと考えられています。
また、初乳は量よりも質が大切といわれており、少量であっても赤ちゃんにとって必要な栄養や免疫成分がしっかり含まれています。
心配しすぎず、体調に合わせて無理のない範囲でケアを行いましょう。
分泌液が出ないと母乳が少ないの?
妊娠中に分泌液が出ないからといって、母乳が出にくいとは限りません。
母乳の本格的な分泌は出産後に始まります。多くの方は産後2〜5日頃から徐々に分泌が増え、安定するまでに数週間かかることもあります。
産前に分泌液が出ないことは珍しくありませんので、過度に心配する必要はありません。
まとめ
今回は、乳頭マッサージについてご紹介しました。
赤ちゃんを迎えるママにとって、「母乳育児」は気になるテーマのひとつかもしれません。
妊娠経過が順調な場合に、医師や助産師と相談しながら乳頭ケアを取り入れることで、産後の授乳が始めやすくなる可能性があります。
一方で、育児の方法はご家庭ごとにさまざまです。
ミルク育児を選択する場合でも、乳房の張りや違和感があるときには、適切なケアが必要になることがあります。乳管の詰まりは乳腺炎につながることもあるため、状態に応じたケアを心がけましょう。
母乳育児・ミルク育児のどちらを選ぶ場合でも、無理をする必要はありません。
乳頭マッサージや授乳方法について不安や疑問があるときは、一人で抱え込まず、医師や助産師に相談してみてください。
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