
妊娠初期は、つわりをはじめとしたさまざまなマイナートラブルに悩む妊婦さんが多い時期です。今回は、妊娠初期に感じやすい強い眠気について解説します。
寝ても寝ても眠気が収まらずに困っている妊婦さんに向けて、おすすめの対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
妊娠初期は眠気を感じやすいって本当?

妊娠初期の代表的な症状といえば、「つわり」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。食べ物やにおいなど、さまざまな刺激で吐き気を感じ、つらい時期を過ごす妊婦さんも少なくありません。実は、妊娠初期には強い眠気を感じる方も多くいらっしゃいます。日中も眠気が続いて仕事や家事に集中できなかったり、「何時間寝ても眠い」「仕事中も眠気が我慢できない」と感じたりする方もいます。
このような強い眠気は、多くの妊婦さんにみられる症状のひとつです。
妊娠初期に眠気を感じやすい理由
妊娠初期に眠気を感じやすい理由として、以下が挙げられます。
プロゲステロンの分泌量が急増する
女性ホルモンの一種であるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、排卵後に急増して高い数値を維持することで子宮内膜を保ちます。卵子が受精・着床し妊娠が成立するとプロゲステロンはさらに分泌量を増やし、妊娠37週前後まで増加し続けるのが特徴です。
プロゲステロンは分解されると「アロプレグナノロン」という強い催眠作用を持つ物質を生成するため、プロゲステロンの増加と共に眠気が強くなることがあります。
自律神経が乱れやすい
自律神経とは、心拍や血圧、体温などを自動で調整してくれる神経のことです。通常は、交感神経と副交感神経がバランスよく切り替わることで、体の調子を保っています。
しかし、妊娠初期は急激なホルモンバランスの変化によって、この自律神経の切り替えがうまくいかなくなることがあります。
その結果、脳への血流が低下して集中力が落ちたり、体温が上がることで睡眠の質が下がったりして、慢性的な眠気につながりやすくなります。
貧血になりやすい
妊娠すると、母体の血液量は40~50%ほど増加するといわれています。ただ、この増えた血液の多くは血漿(けっしょう)によるもので、血液全体の量に対して赤血球の量が追いつかず、相対的に不足しやすくなります。血液の量自体は十分にあっても、酸素を運ぶ役割を持つ赤血球が不足すると、脳に届く酸素の量が少なくなってしまうことがあります。これが、集中力の低下や慢性的な眠気につながることがあります。
基礎体温が上がって睡眠の質が落ちやすい
受精卵が着床して妊娠が成立すると、母体の基礎体温は高い状態(高温期)をキープするようになります。この状態は、妊娠15週頃まで続く方が多いようです。
私たちは、眠っている間に体の内部の温度(深部体温)が下がることで、深い眠りにつくことができます。しかし妊娠初期は基礎体温が上がっているため、眠るときに深部体温が十分に下がりきらず、眠りが浅くなってしまうことがあります。
妊娠初期の眠気はいつからいつまで続く?
妊娠初期の強い眠気は、妊娠超初期と呼ばれる妊娠4~5週頃から感じ始める方が多いです。
「なんだか体がだるい」「寝ても寝ても眠い」といった体調の変化から、妊娠の兆候に気づく方もいらっしゃるかもしれません。
この強い眠気は、妊娠16週頃になると落ち着いてきたという妊婦さんが多くいます。詳しい理由はわかっていませんが、胎盤が完成することが影響しているのではないかという説があります。
【仕事中や外出中など】妊娠初期におすすめの眠気対策
妊娠初期は、まだ周囲に妊娠を伝えていない方も多く、いつも通りに仕事や家事をこなしている方がほとんどです。そのため、強い眠気で仕事に集中できないことを心配する方も少なくありません。外出や用事の途中で、急に強い眠気を感じて困ってしまうという方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、妊娠初期の強い眠気に困ったときのおすすめの対策を紹介します。
眠気は、体が休息を求めているサインです。可能なかぎり体調に合わせて休むのが理想ですが、実際の生活の中では、なかなか休めない場面も多いですよね。そんなときは、ぜひ以下の方法を試してみてください。
仮眠をとる
強い眠気は、何らかの理由により体が休息を求めている合図です。可能なら、仮眠をとりましょう。
仮眠は15~30分程度の時間でとるのがおすすめです。長時間仮眠をとってしまうと、夜間の睡眠の質が低下し、生活リズムが崩れてしまいやすいので注意してください。
お仕事中の方は、デスクでサッと使えるクッション型の仮眠グッズなどを活用して、ランチ休憩に仮眠をとる習慣をつけるのもおすすめです。
寒冷刺激を受ける
冷たいものに触れたり、冷たい空気に触れたりした際の寒冷刺激は、体を活動モードに切り替える交感神経を活性化させます。この交感神経のスイッチが入ることで眠気がスッキリしやすくなります。顔や手を洗う、冷たい風に当たるなど、肌の表面を一気に冷やしてみてください。
ただし、冷たい食べ物や飲み物のとりすぎは体を内側から冷やし、血流を悪くしてしまうことがあるため注意しましょう。
睡眠の質を上げる
妊娠中は睡眠の質が低下しやすく、そのため日中に眠気が起きてしまうこともあります。生活習慣を見直して、睡眠の質を上げる対策がおすすめです。
【睡眠の質をあげるポイント1】寝室の環境を整える
睡眠に適した室温は18~22度、湿度は50~60%程度です。体に合った硬さの寝具を選んだり、遮光カーテンでしっかり部屋を暗くしたりすることも、スムーズな入眠につながります。
【睡眠の質をあげるポイント2】入浴のタイミングを変える
人の体温は、朝の目覚めとともに徐々に上がり、眠る時間に向けて少しずつ下がっていきます。体温が下がり始めてから入浴すると、この体温の下がり方を妨げてしまうことがあるため、入浴のタイミングには注意が必要です。眠る1~2時間前に入浴を済ませておくと、スムーズに体温が下がり、睡眠の質の向上が期待できます。
【睡眠の質をあげるポイント3】食事のタイミングを変える
食事をとると、消化のために内臓が働き始めます。消化が活発なあいだは体温が下がりにくく、深い眠りに入りにくくなることがあります。
眠る2~3時間前までに食事を済ませ、消化が落ち着いたタイミングで眠りにつくと、睡眠の質が上がりやすくなります。
食べづわりなどで夜間の空腹が心配な場合は、温かいお茶やスープ、みそ汁など、低糖質なものを時間をかけてとってみてください。
深呼吸をする
眠気や集中力の低下を感じたときは、大きく深呼吸をしてみるのもおすすめです。ゆっくりと空気を取り込むことで、気分がリフレッシュし、頭がすっきりと感じられることがあります。
眠気を和らげるツボを刺激する
強い眠気を感じている時には、眠気覚ましのツボを刺激するのもおすすめです。
眠気覚ましに使われる代表的なツボには、以下のようなものがあります。
| 百会(ひゃくえ) | 頭のてっぺん。両耳を結んだ線と眉間から後頭部を結んだ線の交わる部分 |
| 労宮(ろうきゅう) | 手のひらの中心部分 |
| 中衝(ちゅうしょう) | 中指の爪の根元付近。親指側の少しくぼんでいる部分 |
ツボを押すときは、強く押しすぎず、心地よいと感じる程度の力で刺激してみてください。
妊娠初期の眠気で受診する目安

眠気を感じるのは自然な反応ですが、以下の症状がみられる場合は受診を検討してみてください。
- 眠気が強すぎて日常生活に支障がでている
- 頻繁に足がつる
- 眠気の症状に関して強い不安を感じている
強すぎる眠気は、極度の貧血状態が影響している可能性があります。また、頻繁に足がつるのは血行不良や栄養不足などのサインでもあります。
日常生活に支障をきたすなど、強い不安感がある場合は、かかりつけ医に相談して他に原因がないか調べてみるのがおすすめです。
妊娠初期の眠気に関するよくある質問
最後に妊娠初期の眠気に関するよくある質問を紹介します。
妊娠初期は眠気覚ましにカフェインを摂取してもいい?
妊娠中のカフェイン摂取は、控えめにしたほうがよいといわれています。
カフェインは鉄分やカルシウムの吸収を妨げる働きがあるため、貧血症状がみられる人の場合は症状が悪化してしまうリスクもあるため注意が必要です。
WHO(世界保健機関)は、妊娠中のカフェイン摂取について1日300mg程度(コーヒーに換算するとおよそ3~4杯程度)にとどめるのが望ましいとしています。また、英国食品基準庁(FSA)では、さらに慎重な基準として、1日あたりのカフェイン摂取量を200mg(コーヒー2杯程度)程度までにとどめることをすすめています。
妊娠中は、カフェイン以外の方法で眠気覚ましをするのが安心です。
生理前の眠気と妊娠初期の眠気はどう違う?
プロゲステロンの増加による眠気は、生理前も妊娠初期も同様に起こる可能性があります。
一方、妊娠初期はプロゲステロンの増加に加え、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、貧血などさまざまな要因が複合的に関係して強い眠気を感じる人が多いです。眠気の感じ方の変化で、生理前の眠気なのか妊娠初期の眠気なのかを判断することはできません。
妊娠初期に急に眠気がなくなると流産のサイン?
眠気が急になくなったからといって、流産(または切迫流産)が起きているとは限りません。
そもそも、眠気の感じ方には個人差があるため、妊娠初期でも眠気をあまり感じなかったという人もいます。胎児の状態によって妊娠初期の眠気がなくなる、という明確な医学的根拠は、今のところ見つかっていません。
寝ても寝ても眠いのはなぜ?
自分では普段通り眠っているつもりでも、妊娠による体の変化によって、睡眠の質が下がってしまうことは珍しくありません。睡眠時間を確保しているのに強い眠気を感じる場合は、睡眠の質を上げる工夫を試してみるのもおすすめです。
まとめ
今回は、妊娠初期の眠気について解説しました。
眠気の原因は体質の変化や睡眠の質の低下など、さまざまな要因が考えられます。今回紹介した対策を参考に、自分に合う方法を少しずつ試してみてください。
眠気は、体が休息を求めているサインです。特に妊娠初期は急激な体の変化やつわり、出産への不安など、心身ともに疲れやすい時期でもあります。眠気を感じた際は、可能な限り休息をとることを大切にしてみてください。
また、「眠気くらいで…」と考えず、生活に支障がある場合は、健診の際などに医師や助産師に相談してみてください。極度の貧血がないか、健康状態に問題がないかなど、隠れているトラブルを早期発見できることもあります。
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