
初めて新しい命をお腹に宿したママから心配事として挙げられるのがお金のことです。特に出産にかかる費用が、どれ位なのか気にかかっているケースも少なくありません。
「出産までにどれ位のお金を用意しておけば良い?」
「金銭的に苦しいんだけど行政で補助は受けられない?」
この記事では、そんな不安を抱えるママの疑問にお答えします。出産を控える人は勿論、これから赤ちゃんを迎えたいと考えている人も是非参考にしてみて下さい。
出産費用とは
出産費用とは、一般的に分娩にかかる費用と分娩に伴う入院費を指します。しかし、実際は出産費用以外にもさまざまお金がかかります。
●出産にまつわる費用の例
- 妊婦検診費用
- マタニティグッズ
- 入院準備品
- 分娩、入院費用
- ベビーグッズ
今回は出産にかかる費用全般についても踏まえて紹介していきます。
出産にかかる費用の相場とは
出産にかかる費用は、人それぞれです。その中でも、統計に基づいた平均費用相場や先輩ママの声を元にした大まかな費用を紹介します。
妊婦検診費用
妊婦検診は、赤ちゃんとママが健康的に出産までの期間を過ごすために必要です。検診費用は受診する医療機関や助産院によって異なります。
妊婦検診では、標準的な受診回数である14回の検診で10万円前後の費用が必要だと言われています。ただし、健康保険に加入している場合これら全てをママが負担する必要はなく、公費で健診費用の一部を補助して貰えるので安心して下さい。
妊婦検診の補助については、記事の後半で詳しく紹介していきます。
分娩・入院費用
赤ちゃんを分娩し、その後入院している間にかかる費用が出産費用です。
公益社団法人国民健康保険中央会の調査によると、自然分娩の場合にかかる出産費用の平均は50万5,759円。細かい内訳は以下になります。
自然分娩の場合にかかる出産費用の内訳(※1)
項目 | 詳細 | 平均値 |
---|---|---|
入院日数 |
産後から退院までの日数
|
6日間
|
入院料 |
部屋代、ベッド代、食事代を含む
|
11万2,726円
|
室料差額 |
個室などを指定した場合に発生する部屋代との差額
|
1万6,580円
|
分娩料 |
自然分娩にかかる費用
|
25万4,180円
|
新生児管理保育料 |
入院期間中赤ちゃんにかかるミルク代・オムツ代を含む管理費用
|
5万621円
|
検査・薬剤料 |
–
|
1万3,124円
|
処置・手当料 |
産後から退院までの日数
|
1万4,563円
|
産科医療保障制度 |
出産の際、赤ちゃんが重度脳性麻痺や後遺症を患ってしまった場合の経済的負担に対する保証制度。殆どの医療機関、助産院が加入している
|
1万5,881円
|
その他 |
–
|
2万8,085円
|
あくまで平均なので、ママや赤ちゃんの状態、出産する施設、出産方法などで変化することも覚えておきましょう。施設や出産方法による費用の違いについては後程詳しく紹介していきます。
※1:公益社団法人国民健康保険中央会「正常分娩の平均的な出産費用について(平成28年度)
マタニティグッズ・ベビーグッズ費用
妊娠中にはマタニティグッズが必要になるママも少なくありません。入院準備品として出産する施設から指定されたマタニティグッズを買い足す場合もありますし、産後は赤ちゃんとの新生活が始まるためベビーグッズも必要です。
ただし、貰い物やお古を譲ってもらうなど、お金を節約する方法が多いのもマタニティグッズやベビーグッズの特徴。先輩ママの経験によると費用の目安は以下の通りです。
項目 | 詳細 | 目安 |
---|---|---|
マタニティグッズ |
妊娠線防止クリーム、マタニティブラ、マタニティショーツ、出産用のT字帯、マタニティパジャマなど
|
3万円以下
|
ベビーグッズ |
服、オムツ、粉ミルク、授乳グッズ、ベビーベッド、ベビー布団、チャイルドシート、ベビーバス、洗剤・保湿クリームなど
|
15万円前後
|
出産する施設による出産費用の違い
出産費用は、出産する施設(病院・レディースクリニック・助産院)によって費用に違いが出ることも覚えておきましょう。
最も出産費用が高額なのは、病院でした。反対に、最も費用が抑えられるのは助産院という統計結果が出ています。
それぞれの平均費用と共に、詳しく解説していきます。
病院
病院で出産した場合、出産費用の相場は51万1,652円(※1)です。3種類の施設の中で、最も高い費用相場になります。
病院では、他の施設に比較すると入院費の相場が約6万2,000円(※1)。入院費用が相場よりも高いことが、出産費用が高額になる要因だと考えられます。
その他の費用は、他の施設とも大差ありません。
レディースクリニック
レディースクリニックで出産した場合、出産費用の相場は50万1,408円(※1)です。全体の平均に最も近い費用相場と言えます。
助産院
助産院で出産した場合、出産費用の相場は46万4,943円(※1)です。3種類の施設の中で最も費用相場が抑えられています。
室料差額や検査・薬剤料が他の施設と比較すると抑えられています。
ただし、平均入院日数が5日間(※1)なのに対して入院料が病院やレディースクリニックの平均入院日数である6日間(※1)とほぼ同じ費用相場です。
全体的に費用は抑えられますが、入院費用だけをピンポイントで見るとやや割高とも言えるでしょう。
費用に差が出る理由
分娩する施設によって出産費用が異なるのは、サービスの違いによるものだと考えられます。
医師や医療スタッフの在中人数、医療設備、食事の内容、出産記念品の内容などが影響しています。
在中するスタッフが多かったり、最新の医療設備が整っていたりする程、高額な費用になるのは経営上仕方のないことでしょう。
また、助産院では医師が在中しておらず、他の施設に比べると在中スタッフが少ない傾向にあります。
助産院での出産費用が抑えられる要因に、妊娠の経過が順調で自然分娩可能なママしか分娩を受け入れていないことが多い点が挙げられます。
助産院では、医療的措置が必要なママは提携病院、または提携クリニックへと転院されることも、出産費用の相場が抑えられている理由と考えられるでしょう。
出産方法による分娩費用の違い
出産費用は、分娩方法によっても異なります。「自然分娩」「帝王切開」「無痛分娩(和痛分娩)」による、費用の違いについても押さえておきましょう。
自然分娩
自然分娩とは、特別な医療措置を必要とせずに行う分娩を指します。
自然分娩の平均費用は、50万5,759円(※1)です。出産は病気では無いという考え方から、保険は適用されず全額自己負担になります。
帝王切開
帝王切開とは、手術によって赤ちゃんを取り出す分娩方法です。前置胎盤や逆子など、健診の段階から帝王切開を検討している場合や、赤ちゃんやママに命の危険があるとして緊急で帝王切開を行う場合があります。
帝王切開は、ママの希望で行える分娩ではありません。医師が医療の介入が必要だと判断した場合にのみ行えるため、医療行為に当たり保険が適用されます。
費用の自己負担額は3割になり、医療に関する行政の補助や医療保険による保障を受けられるケースも多いです。
選択帝王切開(予定帝王切開)の場合、分娩費用は22万1,400円、緊急帝王切開の場合は22万2,000円です(※2)。
自然分娩の平均相場25万4,180円(※1)と比較すると、選択帝王切開との差額は3万2,780円。しかし、帝王切開の場合、7日前後入院するケースが多いため入院費が高くなると考えられます。
※2:令和2年度診療報酬点数に基づいて算出
無痛分娩や和痛分娩
分娩時に痛みを抑えるために麻酔を使用する無痛分娩や和痛分娩。ママの希望で選べる分娩方法です。扱いとしては自然分娩となり、麻酔を用いているものの全て自費負担となります。そのため、分娩費用は高額になるケースが多く、病院やクリニックによって費用設定も大きく異なります。
自然分娩に10~20万円をプラスした費用設定が多いですが、病院やクリニックによっては更に高額になることもあるようです。
※エナレディースクリニックでは無痛分娩は行っておりません
時間帯や日取りによって費用が変わることもある
施設による分娩費用の違いと合わせて、時間帯や日取りによって費用が異なる可能性があることも理解しておきましょう。
受付時間外や休診日に出産が始まった場合、深夜料金や休日料金などが上乗せされるケースがあります。時間帯や日取りによって費用が変わるとは言え、出産のタイミングはコントロールできるものではありません。
受付時間外や休診日に出産が始まった場合を想定して、少し多めに費用を見積もっておく必要があるという程度に考えておきましょう。
妊娠から出産までの費用を補助する制度
妊娠から出産まで、たくさんのお金がかかることが分かってきました。中には「金銭的に余裕がないのに…」と困ってしまうママもいるかもしれません。
そんなママをサポートするため、国や自治体によってママと赤ちゃんの妊娠・出産を補助する制度があります。
妊婦健康診査受診票
妊婦健康診査受診票は、妊婦検診費用を補助する目的で発行されます。母子手帳交付後に受け取ることができ、妊婦検診の際に提出すると検査費用の一部(もしくは全額)を補助してもらえる仕組みです。
妊婦健康診査受診票の発行枚数や補助金額は自治体によって異なります。
妊婦健康診査の公費負担状況の例(※3)
都道府県名 | 平均公費負担状況 |
---|---|
北海道 | 9万9,928円(※4) |
東京都 | 8万6,742円 |
大阪府 | 11万6,309円 |
福岡県 | 10万3,813円 |
沖縄県 | 9万9,215円 |
どの自治体で出産するのかによって、妊娠中の費用負担が異なることが分かりますね。妊娠が分かったら、まずはお住まいの妊婦健康診査受診票の補助率などを調べてみるのもおすすめです。
※3:厚生労働省|妊婦健康診査の公費負担の状況について(平成30年4月1日現在)
※4:公費負担状況を明示していない自治体を除いた値
出産育児一時金
出産育児一時金は、妊娠4ヵ月以上で健康保険に加入している(被扶養者も含む)全てのママに支給される補助金です。申請を行うと赤ちゃん1人につき42万円が支給されます。
出産育児一時金の受給方法は3つあります。
直接支払い制度
受給方法の詳細 | 出産した施設が健康保険に申請を行い、出産育児一時金を出産費用に充当してもらえる。退院までに施設の、直接支払い制度の利用について契約を交わす必要がある。 |
申請のタイミング | 出産前 |
医療機関に支払う出産費用の有無 | 出産費用が給付金を上回る場合、差額を支払う |
ポイント |
|
受取代理人制度
受給方法の詳細 | 出産した施設が、出産育児一時金を代理受給して出産費用に充当してもらえる。事前に健康保険に受け取り代理人制度利用の申請書を提出する必要がある。 |
申請のタイミング | 出産前 |
医療機関に支払う出産費用の有無 | 出産費用が給付金を上回る場合、差額を支払う |
ポイント |
|
受取代理人制度
受給方法の詳細 | 出産後、自分自身で健康保険に出産育児一時金の受給申請を行う |
申請のタイミング | 出産後 |
医療機関に支払う出産費用の有無 | 出産費用を全額支払う |
ポイント |
|
多胎児の場合は、人数分の給付金が支払われることや、産科医療保障制度に未加入の施設で出産した場合は支給額40万4,000円になるといった規定もあります。
出産育児一時金について詳細を知りたい場合は、全国健康保険協会のホームページなどを参考にしてみて下さい。
出産手当金
出産手当金は、就労していて勤務先の健康保険に加入しているママを対象にした補助制度。パートやアルバイトの場合でも、勤務先の健康保険に加入していれば受け取り可能です。
標準報酬月額(過去12ヵ月の平均給与)を基準にして、日給の2/3相当の手当金を98日分(産前42日、産後56日)受け取れます。出産が予定日から遅れた分も加算して受け取り可能です。また、多胎児を妊娠している場合は154日分(産前98日、産後56日)を受給できることも覚えておきましょう。
25万円÷30日=8,333円(日給)
日給8,333×2/3=5,555円(1日当たりの受給額)
5,555×98日分=54万4,390円(出産手当金の総額※予定日通りに出産した場合)
ただし、出産手当金は産後56日経過後に申請し、受給まで1~2カ月かかるケースが多いです。出産費用には充てられないことが多いので注意しましょう。
原則としては産後も仕事を続けることが前提ですが、妊娠中の体調不良によって退職を余儀なくされた場合などでも出産手当金を受け取れるケースがあります。
その際、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があることや、退職時(健康保険の資格喪失時)に出産手当金の受給条件を満たしている必要があります。
働いているママは、妊娠が分かったら加入している健康保険の出産手当金について調べてみましょう。
高度療養費制度
出産時に医療の介入が必要となったママの場合、高度療養費制度を利用できるケースがあります。
健康保険では、1ヵ月にかかった医療費の支払いに上限額が設定されています。上限額を超えた費用は健康保険からの補助を受けられるため、満額を支払う必要がなくなります。これが高度療養費制度です。上限額は、加入者の年齢や年収によって決められます。
帝王切開のママに適用されることが多いので、妊娠中から帝王切開が予定されているママはチェックしておきましょう。詳しくはこちらの記事で紹介しています。
傷病手当金
妊娠中に重度のつわり、切迫流産、切迫早産などで休職を余儀なくされたママの場合、傷病手当金を受けられる場合があります。
ただし、休職中にも給与が発生している場合や、出産手当金を受給する場合は傷病手当の受給を受けられないなどの規定もあるため注意しましょう。
また、加入している公的医療保険によっては、傷病手当金制度を設けていない場合があります。
育児中に受けられる補助・減税制度
ママは赤ちゃんを産んでおしまいではありません。元気な赤ちゃんを健康に育てていくためには、今後もお金が必要となるでしょう。最後に、育児中に受けられる補助・減税制度について簡単に紹介します。
育児休業給付金
育児休業を取得しているママやパパに支給される給付金です。適切に申請することで休業中の社会保険料なども免除してもらえるため、育児休暇を取得するママやパパはチェックしておきましょう。
育児休業に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しているので参考にしてみて下さい。
児童手当
児童手当は、子どもが0歳から中学校を卒業するまで、保護者に支給される給付金です。
子どもの年齢によって受給額が変わり、受給には申請が必要。また、世帯年収によっては、児童手当が減額される場合や受給できないこともあります。
確定申告
出産は保険が適用されませんが、出産にかかった費用は確定申告することで免税を受けられます。確定申告で利用するため、妊娠中から領収書は残しておくように習慣付けましょう。
控除対象の例 | 妊婦検診の費用、出産費用の一部、通院や入退院にかかった交通費(公共交通機関やタクシーの費用)、産後1ヶ月検診費用、治療目的の母乳外来受診費用、不妊治療費用など |
公共交通機関の利用料金等、領収書が発行されないものに関しては家計簿などで記録しておくことで確定申告できます。
エナレディースクリニックの入院費用
特別室は個室代が別途かかりますので大体の目安になりますが、当院で出産したときの費用になります。
入院日数 | 費用 | |
---|---|---|
初産婦 |
産後5日間程度
|
48万円~
|
経産婦 |
産後4日間程度
|
46万円~
|
帝王切開 |
初産・経産いずれの方も7日間
|
43万円~(所得区分によって異なります)
|
上記金額から一時金(42万円)を引いた金額が退院時支払う費用となりますが、詳細はお問い合わせくださいませ。
まとめ
出産にかかるお金や補助制度について詳しく解説してきました。生活していく上でお金は大切なものです。お金の目途がつかないと何かと不安を感じてしまいますよね。
妊娠や出産にかかる費用や補助制度を事前に把握しておき、心穏やかに出産までの期間を過ごして下さいね。
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