
生まれた赤ちゃんとの初めての対面。どのような形で迎えたいか、バースプランで希望を考えているママも多いのではないでしょうか。
赤ちゃんとの最初のふれあいとして「カンガルーケア」を希望されるママやパパも増えています。
この記事では、カンガルーケアについて詳しくご紹介します。あわせて、実施するタイミングや、パパも行えるのかといった、よくある疑問についても解説していきます。
カンガルーケアとは

カンガルーケアとは、生まれたばかりの赤ちゃんを胸に抱いて、直接肌と肌を触れ合わせることです。
カンガルーケアにはさまざまなメリットがあるとされており、バースプランのひとつとして実施を希望されるママも多いです。
一般的には、出産後できるだけ早いタイミングで行われることが多く、ママはベッドに横たわったまま胸元を開き、赤ちゃんを抱いて過ごします。小さな赤ちゃんを胸に抱く姿が、カンガルーの親子に似ていることから、この名前が付けられたといわれています。
元はNICUの赤ちゃんのためのケアとして考案された
現在では広く知られているカンガルーケアですが、もともとはNICU(新生児集中治療室)で、赤ちゃんの状態を安定させる目的で取り入れられてきたケア方法です。
カンガルーケアは、コロンビアで生まれたケア方法であるといわれています。保育器が不足していたことから、低出生体重児の体温を保つ手段として、医師や医療スタッフが赤ちゃんを素肌で抱き、体温や呼吸を安定させる方法として行われていました。
その後の研究により、体温の安定だけでなく、呼吸や循環の調整、母乳育児の促進など、さまざまな効果があることが明らかになってきました。
現在では、NICUに限らず、一般の出産後ケアとしても広く取り入れられています。
医療体制が整っている先進国では、救命率の向上を目的とするというよりも、赤ちゃんとママが安心して触れ合い、親子の絆を育むためのケアとして位置づけられ、多くの医療機関で実施されています。
カンガルーケアと早期母子接触の違い
カンガルーケアは、前述のとおり、もともとNICUで、早産児や低出生体重児のケアとして用いられてきた方法を指していました。
一方、正期産(妊娠37週0日から妊娠41週6日)で生まれた赤ちゃんに対して、出産直後に行われる同様のケアは、「早期母子接触」と呼ばれることがあります。これは、主に赤ちゃんとママが早い段階で触れ合い、安心感や絆を深めることを目的として行われるもので、医療の文脈では用語を区別して使われる場合もあります。
どちらも、赤ちゃんとママが直接肌と肌を触れ合わせるという点では共通しており、内容自体に大きな違いはありません。出生状況や行われる場面によって、呼び方が使い分けられてきた背景があります。
なお、実際にはNICUでのケアに限らず、正期産で生まれた赤ちゃんに対して行う場合でも、「カンガルーケア」という言葉が使われることは珍しくありません。
本記事でも、生まれる時期や状況にかかわらず、出生直後に行う赤ちゃんとママの肌と肌のふれあいを総称して「カンガルーケア」という言葉を用いています。
また、これらのケアは「skin-to-skin contact(スキン・トゥ・スキン)」と呼ばれることもあります。
カンガルーケアで赤ちゃんに期待できる効果

カンガルーケアには、赤ちゃんにとってうれしい影響がいくつもあるとされています。ここでは、赤ちゃんに期待できる主な効果についてご紹介します。
心拍を安定させる
生まれたばかりの赤ちゃんは、産声をあげて呼吸を始める過程で、心拍や呼吸が一時的に不安定になることがあります。カンガルーケアでママの胸に抱かれ、安心できる環境に身を置くことで、赤ちゃんがリラックスし、心拍や呼吸が落ち着きやすくなるといわれています。
体温を安定させる
生まれたばかりの赤ちゃんは体温調節機能が未熟なため、周囲の環境によって体温が変動しやすい状態です。
カンガルーケアでママと直接肌を触れ合わせることで、赤ちゃんの体温が安定し、適切な体温を保ちやすくなる効果が期待できます。
体力を温存させる
出産はママだけでなく、赤ちゃんにとっても大きなエネルギーを使う出来事です。
生後できるだけ早い段階で安心できる状態をつくることで、赤ちゃんが過度に泣き続けることを防ぎ、体力の消耗を抑えることにつながります。カンガルーケアによって落ち着き、泣き止む赤ちゃんも少なくありません。
免疫機能の発達を助ける
赤ちゃんがママの肌に直接触れることで、ママの皮膚に存在する常在菌に触れる機会が生まれます。常在菌に触れることで、赤ちゃんは少しずつ体を守る力を身につけ、免疫力の発達に関わると考えられています。
カンガルーケアでママに期待できる効果

カンガルーケアは赤ちゃんだけでなく、ママにとってもさまざまなよい影響があるといわれています。ここでは、ママに期待できる主な効果についてご紹介します。
愛着形成
カンガルーケアで赤ちゃんと肌を触れ合わせることで、ママの体内ではオキシトシンの分泌が促されるといわれています。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、赤ちゃんへの愛着や安心感を育むうえで大切な役割を持つホルモンです。
そのため、カンガルーケアは赤ちゃんとの絆を深めるきっかけのひとつになると考えられています。
母乳の分泌を促す
赤ちゃんと触れ合うことで、母乳の分泌に関わるプロラクチンというホルモンの分泌が促されるといわれています。
プロラクチンには母乳を生成・分泌する働きがあるため、母乳育児をしたいママにもカンガルーケアがおすすめです。
産後うつを予防する
出産後は、ホルモンバランスの大きな変化や生活環境の変化により、心身ともに不安定になりやすい時期でもあります。
赤ちゃんと肌を触れ合わせることで、安心感が得られ、気持ちが落ち着きやすくなるとされています。こうした身体的なふれあいは、産後うつの予防につながる可能性があるともいわれており、カンガルーケアは、ママの心の安定を支えるひとつのきっかけになると考えられています。
カンガルーケアをしないとどうなる?
カンガルーケアのメリットを知ると、「赤ちゃんのためになるなら、必ず行ったほうがよいのでは」と感じるママもいらっしゃるかもしれません。
しかし実際には、赤ちゃんやママの体調によって、出産直後に触れ合うことが難しい場合もあります。また、産院の体制や出産の状況によっては、カンガルーケアの実施が難しいケースも少なくありません。
カンガルーケアは、赤ちゃんとママの状態が安定しており、無理のない状況で行える場合に推奨されるケアのひとつです。行わなかったからといって、赤ちゃんやママに不利益が生じるものではなく、必ず実施しなければならないものではありません。
ご自身や赤ちゃんの体調、出産時の状況に合わせて、無理のない選択をすることが大切です。
カンガルーケアはいつやるの?
カンガルーケア(早期母子接触)は、基本的には出産後できるだけ早いタイミングで行われることが多いです。ママと赤ちゃんの処置が一通り終わったあとに、状態を確認しながら実施されます。
実施時間は医療機関や出産状況によって異なりますが、おおよそ1〜2時間程度行われることが一般的です。
出産後の赤ちゃんは、生後しばらくの間は覚醒していることが多く、その後2時間以内に眠りにつくケースが多いとされています。そのため、赤ちゃんが起きている時間帯にカンガルーケアを行うことが望ましいと考えられています。
ただし、ママや赤ちゃんの体調によっては、出産直後にカンガルーケアを行うことが難しい場合もあります。
もともとNICUで行われてきたカンガルーケアは、出生直後に限られたケアではありません。出産直後に実施できなかった場合でも、状態が落ち着いてから、時間をおいて行うことも可能です。
カンガルーケアはパパもできる?

カンガルーケアは、ママだけでなくパパが行うことも可能です。
妊娠中からお腹の中で赤ちゃんの成長を感じてきたママに比べ、パパは赤ちゃんが生まれてから、その存在をより実感することが多いかもしれません。出生直後にカンガルーケアを通して赤ちゃんと触れ合うことで、赤ちゃんの誕生を実感し、親としての気持ちが芽生えやすくなるといわれています。
また、ママが帝王切開で出産した場合は、出産後に縫合などの処置が必要となるため、その間にパパがカンガルーケアを行うケースもあります。
なお、パパによるカンガルーケアの対応可否や実施方法は、産院によって異なります。希望される場合は、事前に産院へ相談しておくと安心です。
カンガルーケアの注意点
カンガルーケアは、赤ちゃんとママ(またはパパ)が肌と肌を触れ合わせる大切なケアですが、ただ赤ちゃんを抱けばよいというものではありません。安全に行うためには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
医療従事者の管理下で行う
出生後まもない赤ちゃんにカンガルーケアを行う場合は、必ず医療従事者の管理下で実施することが大切です。
生まれた直後の赤ちゃんは、一見元気そうに見えても、容態が急変することがあります。カンガルーケアの有無にかかわらず、新生児では約5万出生に1件の割合で呼吸停止などの重篤な事象が起こるとされており、注意深い観察が必要です。
出産直後のママやご家族は疲労が強く、赤ちゃんのわずかな変化に気づきにくいこともあります。特に初産の場合は、不安や緊張も重なりやすいため、医療スタッフがそばで見守る環境で行うことが重要です。
また、強い疲労の中で赤ちゃんを抱くことで、姿勢が不安定になり、転落につながるリスクが指摘されることもあります。出生直後のカンガルーケアは、必ず医療従事者のサポートを受けながら行いましょう。
皮膚疾患がある場合は中止する
ママやパパに発疹やヘルペスなどの皮膚疾患がある場合は、カンガルーケアを控える必要があります。特にヘルペスは、新生児が感染すると重篤な症状を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
肌と肌が直接触れ合うことで、赤ちゃんが常在菌以外の細菌やウイルスに触れてしまう可能性もあります。皮膚の状態に不安がある場合は、必ず医療従事者に相談し、実施して問題ないか確認しましょう。
カンガルーケアができない場合もあることを理解しておく
カンガルーケアを強く希望されるママも多いですが、実施にあたっては、赤ちゃんとママ双方の状態が安定していることが前提となります。
出産時の状況によっては、赤ちゃんやママの容態を優先し、状態が落ち着くまで肌と肌の接触を控えるケースもあります。
出産は予測できないことも多いため、カンガルーケアが実施できない場合があることも理解しておくことが大切です。
まとめ
赤ちゃんとママにとって、さまざまなメリットが期待できるカンガルーケアについてご紹介してきました。
カンガルーケアは、もともと低出生体重児や早産児の命を守るために生まれたケア方法ですが、現在では赤ちゃんの負担を和らげたり、母子の愛着形成を深めたりする効果も期待され、出産後のケアとして取り入れる産院も増えています。
一方で、適切な環境や医療従事者による管理体制が整っていない場合には、注意が必要な場面があることも理解しておきましょう。
メリットや注意点をふまえたうえで、カンガルーケアを行うかどうかについて、ぜひご家族で話し合ってみてくださいね。
当院では、出産後すぐお臍(臍帯)を切ってから、赤ちゃんにSpO2モニターを装着し、全身状態に注意しながらカンガルーケア(早期母子接触)を行っております。
※赤ちゃんやお母さんが体調不良の場合、中止します。
帝王切開の場合は、手術後にカンガルーケアを行うことができます。
助産師外来で、バースプランを確認しますので、ご希望される方はお声掛けくださいね。
