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「5人に1人」が経験する帝王切開だから高額療養費制度を知っておいて

帝王切開での出産はもはや珍しくなくなり、厚生労働省によると、5人に1人が経験しています(※)。
(※)厚生労働省「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」

この記事ではまず、高額療養費制度の仕組みについて解説します。そのうえで、帝王切開でこの制度をどのように使うのか紹介します。最後に、帝王切開のデータや基礎知識を確認しておきます。

高額療養費制度では「上限額を超えたお金が戻ってくる」

高額療養費制度は、帝王切開だけの仕組みではありません。公的医療保険が適用される診療を受け、患者さんの自己負担額が高額になれば、条件を満たせば、どの病気でもこの制度の対象になります。

普通分娩は、公的医療保険が適用される診療ではないので、高額療養費制度は使えません。普通分娩の費用は、全額自己負担になります。
しかし帝王切開での出産に限っては、公的医療保険が適用される診療なので、高額療養費制度を使えます。

上限額とは?いくら支給されるのか?

高額療養費制度で支給される額は、月の1日から末日までの自己負担額(病院や薬局で支払った額)が「上限額」を超えたときの、その超えた分の全額です。
計算式で表すとこのようになります。

支給額=自己負担額(3割など)-上限額

上限額については次の章で詳しく説明します。
ここでは、大体の数字で解説します。

例えば、ある病気の医療費が1カ月で100万円かかり、患者さんの自己負担額が3割の30万円になったとします。患者さんは先に、この30万円を病院に支払います。
この人の高額療養費制度上の上限額が10万円だった場合、同制度から20万円(=30万円-10万円)が支給されます。
その結果この患者さんは、100万円分の医療を受けて、10万円支払ったことになるので、1割負担で済んだことになります。

 

高額医療費制度のイメージ

上限額は人によって変わります。

上限額は年齢と所得によって決まる

高額療養費制度から支給されるお金は、同じ医療を受けて医療費が同額になっても、年齢と所得によって異なります。
上限額の計算式は以下のとおりです。

<69歳以下>

●年収約1,160万円~
(健康保険:標準報酬月額83万円以上、国民健康保険:所得901万円超)
ひと月の上限額=252,600円+(医療費-842,000円)×1%

●年収約770万~1,160万円
(健康保険:標準報酬月額53万~79万円、国民健康保険:所得600万~901万円)
ひと月の上限額=167,400円+(医療費-558,000円)×1%

●年収約370万~770万円
(健康保険:標準報酬月額28万~50万円以上、国民健康保険:所得210万~600円)
ひと月の上限額=80,100円+(医療費-267,000円)×1%

●~年収約370万円
(健康保険:標準報酬月額26万円以下、国民健康保険:所得210万円以下)
ひと月の上限額=57,600円

●住民税非課税者:35,400円

(70歳以上の上限額の表示は省略します)

細々と書きましたが、「年齢」「健康保険の負担割合」「1ヶ月の医療費」「所得区分」を入力・選択するだけで、高額療養費の給付額と自己負担限度額をシミュレーションできるサイトもありますので、是非チェックしてみてくださいね。

価格.com – 高額療養費の自己負担限度額計算シミュレーション

高額療養費制度を使えるケースと使えない場合

年収約300万円の人の帝王切開の医療費(保険適用分)が40万円になったら、自己負担3割は12万円です。先に、この金額と保険適用外分の金額を病院に支払います。
しかし、年収約300万円の人のひと月の上限額は57,600円なので、自己負担3割12万円との差額、62,400円(=120,000円-57,600円)があとから、高額療養費制度から支給されます。

ただし、年収約800万円の人の帝王切開の医療費(保険適用分)が40万円だった場合、この人は高額療養費制度を使うことはできません。その理由は次のとおりです。

・年収約800万円のひと月の上限額=167,400円+(400,000-558,000円)×1%=165,820円
・保険適用分40万円の自己負担3割:12万円 ←165,820円より低額

自己負担3割12万円が、上限額165,820円に届かないので、この人は自己負担3割12万円と保険適用外分を病院に支払い、高額療養費制度からは支給されません。

高額療養費制度は「後払い」

高額療養費制度から支給されるお金は、原則、後払いになります。
帝王切開を受けたら、まずはその病院に、保険適用分の自己負担3割分の医療費と、保険適応外分の分娩介助費などを支払います。
そのあと、手続きをすることで、保険適用分の「自己負担3割分-上限額」分のお金が高額療養費制度から支給されます。

手続きは、母親が加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保、共済組合など)に、高額療養費の支給申請書を提出します。
会社員であれば、会社の総務部などで手続することになります。

高額療養費制度の「限度額適用認定証」制度

高額療養費制度は後払いのため、母親は一時的に「大金」を負担しなければなりません。しかも、払い戻されるまでに3カ月以上かかることがあります。
しかし「限度額適用認定証」という仕組みを使うと、医療機関の窓口で支払う金額が、上限額までになり、後払いがなくなります。
この仕組みを使うには、健康保険組合などに「限度額適用認定証」を発行してもらう必要があります。医療機関の窓口で「限度額適用認定証」と保険証を提示すると、この仕組みを使うことができます。
当院では、基本的に「限度額適用認定証」制度を優先しております。

札幌・石狩の限度額適用認定証の手続きについては、各自治体の公式サイトに詳細が記載されておりますので、チェックしましょう。

帝王切開の治療費と高額療養費制度

帝王切開に関わるすべての費用が高額療養費制度の対象になるわけではありません。
対象になるのは、診察費や検査費、治療費、薬代などの、公的医療保険が適用される医療費のうち、自己負担した分です。
医療費のうち、公的医療保険が負担している分のお金は、高額療養費制度の対象から外れます。
また、入院費は医療費に含まれますが、入院中の食費、居住費、差額室料は含まれません。

帝王切開のデータと基礎知識

厚生労働省は、毎年9月の1カ月分の全国の分娩件数と帝王切開件数を集計しています。
2017年9月の一般病院での分娩件数は41,778件で、そのうち帝王切開件数は10,761件(分娩件数に占める割合25.8%)でした。同じ月、一般診療所では分娩件数35,175件、帝王切開件数4,926件(同14.0%)でした。
合わせると、分娩件数76,953件、帝王切開件数15,687件(同20.4%)。
帝王切開を行う率が20.4%なので、ほぼ5件に1件が帝王切開であることがわかります。

※参考:厚生労働省平成 29 年(2017) 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/dl/09gaikyo29.pdf

帝王切開とは

帝王切開とは、母親または赤ちゃん、または両方に問題が生じて、普通分娩が難しいと判断された場合に行われます。
母親に麻酔をして、腹部と子宮壁をメスで切開して、赤ちゃんを生まれさせます。麻酔は、局所麻酔をする場合と、全身麻酔をする場合があります。

逆子など重大な問題がわかっている場合は、あらかじめ帝王切開することを決めますが、なかには、普通分娩中に問題が生じて、急遽、帝王切開に切り替えることもあります。

帝王切開の費用は約70万円?

普通分娩は公的医療保険の対象外なので、その費用は病院やクリニックが自由に決めることができます。目安は大体50万円ですが、これより低額で行なうところもありますし、豪華な食事や個室を提供する病院では、100万円を超えることもあります。

帝王切開の費用は「一般的な普通分娩の費用より10万~20万円ほど高い」といわれているので、「大体70万円」が目安になります。

所得区分によりますが、エナでの帝王切開の費用は保険適応外分と保険適応分を足して43万円~になります。

まとめ~帝王切開が決まったら手続きを

帝王切開をすることが決まったら、限度額適用認定証などを使う準備に取りかかったほうがよいでしょう。「お金が戻ってくる」ことがわかれば、経済的な心配が少し減るからです。
もちろん、急を要する場合はその限りではありません。赤ちゃんが誕生してからゆっくり手続きしてください。

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この記事の監修
エナみらいグループ統括医師 宿田 孝弘
宿田 孝弘
エナみらいグループ統括医師
札幌・石狩の産婦人科「エナレディースクリニック」の宿田です。母と子に優しいお産、女性が求める医療がエナにはあります。札幌・石狩市での出産や婦人科疾患のお悩みなど、お気軽にご相談ください。