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胎盤の役割とは?いつ完成する?前置胎盤や早期剥離などのリスクは?

医療法人みらいグループ
胎盤の役割とは?いつ完成する?前置胎盤や早期剥離などのリスクは?

お腹の赤ちゃんにとって非常に大切な臓器の1つ「胎盤」。生命維持に欠かせない胎盤の完成は、赤ちゃんが健康に成長する1つの目安ともされています。

この記事では、胎盤の役割や完成する時期、胎盤に関するトラブルや話題の胎盤食について解説。
胎盤の完成を心待ちにしている人も、既に胎盤が完成している人も、胎盤について理解を深める参考にしてみて下さい。

赤ちゃんに欠かせない器官「胎盤」

赤ちゃんの成長に欠かせないとされる胎盤ですが、その理由は胎盤の構造や役割にありました。
まずは、胎盤がどのような器官なのかを知ることから始めましょう。

胎盤とは

胎盤とは、着床後ママの子宮内に出来る円盤状の器官です。正常な場合、子宮上部に貼りついて赤ちゃんの成長と共に成長します。

生産期を迎える頃には直径約20~30cm、厚さ2~3cm、重さは500~600g程になり、産院によっては出産後に排出した胎盤を見せてもらえる場合も。
実際に自分の胎盤を見たママの中には、レバーや血の塊のように見えたという人もいます。

胎盤の内部

胎盤の内部は多くの血管が張り巡らされています。その中に中隔という仕切りのような部位があり、多くの血管から集められた血液は中隔で仕切られた小部屋の中を満たしている状態です。

小部屋の中には絨毛と呼ばれる器官が密生していて、絨毛が血液の中から赤ちゃんに必要な栄養素を取り込んで臍帯(へその緒)から赤ちゃんに送り込んでいます。

逆に赤ちゃんから老廃物などを送られてくる際も絨毛が血液中への受け渡しを行っていて、絨毛は胎盤の中で赤ちゃんとママの受け渡しをサポートしている大切な器官です。

胎盤の役割

胎盤には大きく分けて5つの役割があります。

赤ちゃんの呼吸をサポート

ママの血液中から受け取った酸素を赤ちゃんに送り、赤ちゃんの体から排出されたに二酸化炭素を受け取ってママの血液に戻します。

赤ちゃんの食事をサポート

ママの血液からアミノ酸や脂肪を始めとした様々な栄養素を受け取り、赤ちゃんへ送ります。

妊娠の継続をサポート

妊娠状態を維持するためにhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)、女性ホルモンなどを分泌しています。

赤ちゃんの排泄をサポート

赤ちゃんの胎内から排出される老廃物を受け取り、ママの血液に戻します。

赤ちゃんを有害な物質から守る

血液中の有害物質が赤ちゃんへと届かないように、フィルターの役目を果たして赤ちゃんを守っています。
ただし、タバコに含まれるニコチンやアルコール、一部の薬などは分子量が小さくフィルターをくぐりぬけてしまうことも。

胎盤ができるまで

妊娠していない女性には存在しない胎盤。どんな風に出来て、いつ完成するのでしょうか?胎盤が作られ始めて完成するまでの過程を解説します。

胎盤が作られる過程

受精卵が着床して妊娠状態となると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの働きによって着床した部分に絨毛ができます。これが胎盤の誕生ともいえる変化です。
絨毛ができた部分は、成長と共に厚みを持ち妊娠7週頃から胎盤として器官を作り始めます。

つまり、着床した場所によって胎盤ができる位置が決まるということです。
正常な胎盤が子宮口から離れた子宮上部にあるのは、卵管で受精した受精卵が子宮に到着して一番近い子宮内膜に着床するためだということが分かりますね。

胎盤が完成する時期

胎盤は妊娠15週頃に完成して、様々な役割を担う器官として機能し始めます。
完成時は約100gの小さな胎盤が、胎児と共に成長して出産する頃になると5~6倍の大きさになるのです。

ちなみに、胎盤が完成するまで赤ちゃんは卵黄嚢という部分から栄養を補給して成長していきます。
胎盤の完成と共に卵黄嚢から胎盤へと栄養補給先を切り替え、ママから直接様々な栄養を受け取るため15週以降は成長スピードが急激に加速。
胎盤が完成すると、妊娠初期の自然流産リスクが激減することから「安定期」と呼ばれる時期に入ります。

胎盤が完成するまでに注意すること

胎盤は赤ちゃんの成長に欠かせない器官であるため、適切な時期に完成して機能しないとその後の妊娠期間にも問題が発生してしまう可能性があります。
胎盤の成長と赤ちゃんの成長は比例していて、発育不全の赤ちゃんには小さい・薄い・石灰化しているなど胎盤の異常が見られることも。

胎盤の発育を促すためには、無理をせず十分な休息と栄養バランスの良い食事が欠かせません。
妊娠初期はつわりでバランスの良い食事を摂れないママも多いですが、あまりに食事をとれない場合には医師に相談を。
健康な胎盤を完成させるために、体を休めながら栄養を摂って過ごしましょう。

胎盤完成後も健康な生活で成長を促すためのポイント

胎盤は完成したら終わりという訳ではありません。
出産まで胎児と共に成長する胎盤をサポートするため、以下のポイントに気を付けましょう。

妊娠高血圧症候群に注意

妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に発症する高血圧のこと。妊娠糖尿病や高血圧腎症なども引き起こしやすくなる病気です。
妊娠高血圧症になると、毛細血管がダメージを受けるため、血管の密集する胎盤内では血液が流れにくくなり機能が低下してしまうリスクも。
胎盤の成長を妨げるだけでなく、赤ちゃんにまで影響してしまう可能性のある病気です。

適切な体重管理と塩分を控えた食事、過労やストレスを抑えることも妊娠高血圧症候群対策に有効だと言われています。
体のむくみも血圧を上げてしまう原因になるので、むくみを感じる際にはマッサージや水分の取り過ぎに気を付けるなどの対策を取りましょう。

サラサラ血液で胎盤の流れをスムーズに

胎盤は無数の血管が密集している器官なので、血液がドロドロだと血流が悪くなり本来の機能を充分に発揮できなくなってしまいます。

サラサラの健康的な血液を作るのにおすすめなのはビタミンE。血液をサラサラにするだけでなく血中の過酸化脂質を分解してくれる栄養素です。
豆腐などの大豆食品、ナッツなどの豆類、緑黄色野菜、タラコや鮭などの魚類にも多く含まれるので、ビタミンEを取り入れたバランスの良い食事を心掛けてみて下さい。

胎盤のトラブル

赤ちゃんの生命線とも言える胎盤。胎盤が関係する病気やトラブルは生死に関るものが多いため、症状が出た際の迅速な対応が大切。
いざという時に対処できるよう胎盤の病気やトラブルがどんなものかを知っておきましょう。

前置胎盤

通常子宮の上部にできる胎盤が、子宮口を塞ぐよう子宮下部にできてしまうのが前置胎盤。
胎盤の位置は子宮の成長と共に変わっていく事もあるので、胎盤が完成した頃には「前置胎盤疑い」と診断される事が多いです。
胎盤と子宮口が2cm以上重なっている状態が妊娠24~31週頃になっても改善されない場合、前置胎盤として確定診断されます。

発見方法 定期健診のエコーにて胎盤の位置を確認して行います。
症状 痛みを伴わない突然の出血「警告出血」が起こりやすくなります。
子宮収縮や子宮口が開くことで、胎盤の一部が剥がれてしまうと大量出血や早産に繋がることも。
対処法 前置胎盤疑い、もしくは前置胎盤の確定診断を受けた場合には、安静にして子宮伸縮を起こさないことが大切です。
それでも子宮伸縮が起こる場合には、子宮伸縮抑制剤が処方される場合も。
前置胎盤になると自然分娩では大量出血や胎盤剥離による赤ちゃんへのリスクが高くなるため、37週末までに予定帝王切開を行う場合が多いです。

低置胎盤

前置胎盤と同じく、胎盤の位置に問題があるのが低地胎盤です。低地胎盤は、前置胎盤と異なり子宮口を塞いでいないのが特徴。ただし、子宮口から2cm以内に胎盤があるためリスクや対処法は前置胎盤と殆ど同じだと言っても良いでしょう。

前置胎盤との大きな違いとして、子宮口との位置関係によっては経腟分娩による出産を選択する場合があるという点が挙げられます。
ただし、分娩中に出血が起こるリスクもあり、緊急時には帝王切開に切り替えることも珍しくありません。

常位胎盤早期剥離

出産が始まる前に、胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剝離。胎盤が剥がれることで赤ちゃんには栄養だけでなく酸素など生きるために必要な供給も経たれてしまう他、大量出血によって母子ともに命の危険もある怖い病気です。

健康な妊婦が突然発症することも珍しくないため予測が難しく、現在の医学では妊娠高血圧症候群や絨毛膜羊膜炎などがリスク因子であると言われています。
全ての妊婦の0.49・~1.29%に起こるとされている病気です。

発見方法 前兆が殆どなくエコーでも見つけるのは難しいため、出血や激痛などの症状を持って診断されることが多いです。
症状 赤ちゃんへの酸素供給不足による窒息、ママの大量出血や多臓器不全を起こす場合もあります。
対処法 赤ちゃんが産後も生命を維持できる程度に成長している場合や、母子共に危険な状態にある場合は帝王切開や人為的に短時間で分娩を行う急速遂娩の処置を施すことも。
赤ちゃんがまだ成熟しておらず、母子の容態が安定している場合には管理入院をしながら経過を見て妊娠を継続することもあります。

癒着胎盤

常位胎盤早期剥離よりも稀な病気で2,000~4,000例に1例程の割合で起こる癒着胎盤という症状。その名の通り、胎盤が子宮の筋肉に癒着して剥がれなくなってしまう状態です。
無理矢理剥がすと大量出血の危険性が高く、前置胎盤と合併することが多いのも癒着胎盤の特徴。
過去に帝王切開をした人、子宮内膜炎になったことのある人、流産や妊娠中絶の際に掻把施術を受けたことのある人、体外受精により妊娠した人が比較的ハイリスクと言われています。

癒着胎盤は、軽度の「楔入胎盤(せつにゅうたいばん)」、中度の「嵌入胎盤(かんにゅうたいばん)」、重度の「穿通胎盤(せんつうたいばん)」の3つに分類され嵌入胎盤と穿通胎盤の場合は、子宮を摘出する処置が必要なケースが多いです。

発見方法 超音波検査やMRIにより「強い疑い有り」という診断はできるものの確定診断は出来ず、多くの場合出産後に胎盤が自然排出されないことで確定診断されます。
さらに、癒着程度の軽い楔入胎盤は超音波やMRIでも発見しにくいと言われています。
症状 子宮を引き剥がす際に大量出血のリスクがある。
対処法 嵌入胎盤や穿通胎盤などの強い疑いがなく出産を迎えた場合、子宮マッサージなどで自然に胎盤が剥がれるよう促す場合が多いです。
それでも剥がれない場合には医師が手で胎盤を剥がす処置や、大量出血などの危険がある場合には外科的処置で子宮摘出を行うこともあります。
事前に癒着胎盤の疑いがある場合は、胎盤処置時の大量出血に備えて自分の血液を輸血用として採取し保存しておくケースも。
輸血対策をする場合には妊娠28週頃から行い、鉄剤の処方によって血液量を増やす処置も同時に行います。

胎盤機能不全

胎盤機能不全は、胎盤が本来の働きを正常にできなくなる状態です。
主に妊娠42週を超えると、胎盤は機能が低下して胎盤機能不全に陥るリスクが高まるとされています。
生産期を迎えても自然に陣痛が起こらない場合、妊娠42週を超える前に促進剤などによって計画分娩を行うのはこのためです。

胎盤機能不全になると、赤ちゃんは栄養が送り届けられないことで十分に成長できず、酸素が供給されなければ窒息してしまいます。

胎盤機能不全は42週を超える過期妊娠だけでなく妊娠高血圧症候群や糖尿病、腎炎なども要因の1つ。
胎盤機能不全により胎盤が十分に子宮に貼り付いていない場合、常位胎盤早期剥離を引き起こす可能性もあります。

発見方法 エコー検査で胎盤の大きさが小さい場合、胎盤機能不全が疑われます。
確定的な診断は難しく、胎盤や赤ちゃんの成長具合を経過観察しながら診断します。
症状 赤ちゃんの発育不全や先天性欠損症、不正出血、早産などのリスクがあります。
対処法 出来る限り安静にして経過を観察しながら妊娠を継続します。
生産期が近付いた場合、胎児の体力を考慮して帝王切開の処置にて出産するケースも珍しくありません。

胎盤食とは

無事出産して役目を果たした胎盤を食べる「胎盤食」を知っていますか?最後に、近年話題になっている胎盤食について紹介します。

胎盤食は野生動物の本能行動

胎盤食はそもそも野生動物の本能行動です。野生では出産後、敵から襲われないように血の匂いを早く消すため胎盤を食べて処分する動物や、出産で失った栄養を補給するために胎盤を食べる動物がいます。
外的から身を守る必要もなく、豊富な栄養を摂取できる人間にとって、胎盤食は絶対に必要な行動という訳ではないと言えるでしょう。

有名人が胎盤食を行ったことで話題に

近年、胎盤食に注目が集まっている要因として世界的スターが出産の際に胎盤食を行ったと公言したことにあります。
日本でも様々な有名人が胎盤食を試みたことを発信した事により、胎盤食が知られ興味を持つ人が増えてきたのが注目される理由です。

胎盤食のメリット

胎盤食には産後うつの予防や活力の向上、母乳の分泌促進、産後の出血抑制、プラセンタなどの美容成分による美肌効果などのメリットが挙げられています。

一方で、ここでメリットとして挙げられる効果は科学的根拠がないという研究結果も。明確な効果は未だ立証されていません。

胎盤食のデメリット

胎盤食のデメリットには食中毒などの感染症リスクがあります。特に生で食べた場合には、他の肉類同様に様々な感染症リスクが高くなるでしょう。
実際にアメリカでは胎盤食が原因とされる敗血症を発症した人がいるという報告も。不十分な加熱では、HIV、ジカウイルス、肝炎ウイルスなどを死滅できない可能性についても言及されています。

胎盤の食べ方

胎盤食をする場合、生食か加熱調理を行うのが一般的。アメリカでは乾燥させた胎盤をカプセルやスムージーに、サプリメントに加工する業者も存在します。

日本では、加熱調理をして胎盤食を行う人が多いようです。

胎盤の取り扱い

胎盤食自体は法的に問題がないものの、胎盤の取り扱いにはルールがあります。
胎盤は人の臓器となるため、医療廃棄物として処理することが義務付けられています。

つまり、胎盤食を行うために持ち帰った胎盤をそのまま廃棄してしまうと違法となるケースも。取り扱いには十分に注意しましょう。

健康な胎盤で赤ちゃんの成長をサポートしよう

赤ちゃんの健やかな成長に欠かせない胎盤について解説してきました。胎盤の働きやトラブルを知ると、その重要性がよく分かりますよね。
15週を迎えて胎盤が完成してからも、油断せず、胎盤を通して赤ちゃんの成長をサポートできるよう健康的な妊娠生活を送りましょう。
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この記事の監修
エナみらいグループ総院長 宿田 孝弘
宿田 孝弘
エナみらいグループ総院長
札幌・石狩の産婦人科「エナレディースクリニック」の宿田です。母と子に優しいお産、女性が求める医療がエナにはあります。札幌・石狩市での出産や婦人科疾患のお悩みなど、お気軽にご相談ください。