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妊娠高血圧症候群とは?症状や原因、予防策を徹底解説!

医療法人みらいグループ
妊娠高血圧症候群とは?症状や原因、予防策を徹底解説!

妊婦の20人に1人が発症すると言われる妊娠高血圧症候群。誰にでも発症するリスクがあり、ママと赤ちゃんにとって危険な病気の1つです。
この記事では妊娠高血圧症候群がどんな病気なのかを徹底紹介。原因や症状、治療方法や予防策なども紹介しています。

「妊娠高血圧症候群ってどんな症状がでるの?」
「赤ちゃんにはどんな影響がでるの?」
「妊娠高血圧症候群になると帝王切開になるって本当?」

そんな疑問を持っているママは是非参考にしてみて下さい。

妊娠高血圧症候群とは

妊娠高血圧症候群は、昔から「妊娠中毒症」として知られてきた妊婦特有の病気の1つです。

現在は、【妊娠高血圧症・妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症・高血圧合併症】など妊娠中に起こる高血圧症疾患群の総称として「妊娠高血圧症候群(HDP)」と呼ばれます。

妊娠高血圧症候群は妊婦全体の7~10%が発症すると言われており、妊娠前の高血圧に関係なく誰にでも起こり得る病気です。

妊娠高血圧症

妊娠高血圧症は、妊娠20週から産後12週までの間に元々高血圧の症状が無かった人が高血圧になる病気です。妊婦検診の血圧測定で発覚することが多く、特に妊娠後期で発症する人が多い傾向にあります。

妊娠高血圧腎症

妊娠高血圧症に加え、たんぱく尿、基礎疾患のない肝腎機能障害、血小板の減少、肺水腫、子癇、視覚障害、頭痛、子宮胎盤機能不全などを伴う場合妊娠高血圧腎症と診断されます。妊娠高血圧症と同じく妊婦検診の際の尿検査で発覚することが多いですが、簡易検査では擬陽性となるケースもあります。

妊娠高血症候群の定義では、高血圧が先行している状態でたんぱく尿の判定が出た場合に妊娠高血圧腎症と診断されます。高血圧を伴わずに、たんぱく尿だけが判定された場合は妊娠高血圧症候群とは診断されません。「たんぱく尿=妊娠高血圧症候群」という訳ではないので注意して下さい。

加重型妊娠高血圧腎症

妊娠20週以前に妊娠高血圧症と診断されて、妊娠20週以降にたんぱく尿、基礎疾患のない肝腎機能障害、血小板の減少、肺水腫、子癇、市や障害、頭痛などを伴う場合、加重型妊娠高血圧腎症と診断されます。

初期の内に腎機能障害などが起こるケースもあり、妊娠高血圧症候群の中でもハイリスクな病気と言えるでしょう。

高血圧合併妊娠

妊娠前から高血圧症だった人が妊娠した場合には高血圧合併妊娠と診断されます。これまで薬による血圧のコントロールを行っていた人は、妊娠中でも服用できる薬に切り替えが必要です。

妊娠高血圧症と比較すると急激な血圧上昇などは起こりにくく、服薬による血圧コントロールがうまくいけば、正産期まで妊娠を継続できるケースも多いのが特徴です。

2018年には妊娠高血圧症候群のガイドラインが変更

これまでは、妊娠高血圧に加えてたんぱく尿が認められない場合には他の症状があっても妊娠高血圧症として診断されていましたが、2018年に妊娠高血圧症候群のガイドラインが変更。

高血圧が先行した状態でたんぱく尿がなくても、妊娠高血圧症に伴う肝臓や腎臓の機能障害、子癇や頭痛などの神経障害、血小板が減少する血液凝固障害、赤ちゃんの発育不全のいずれかが認められる場合には「妊娠高血圧腎症」と診断されるようになりました。

妊娠高血圧症候群以外の妊娠に関わる高血圧

妊娠高血圧症候群には分類されませんが、病院で測定する時にだけ血圧が上がってしまう「白衣高血圧」という症状があります。
緊張から血圧が上がりやすい人に多く、普段はそこまで血圧が高くないのに病院で血圧を測定する時にだけ緊張して高い数値が測定されてしまいます。自宅で過ごす際に適正な血圧であれば特に問題はありません。

白衣高血圧から本当に妊娠高血圧症になるケースもあるので、白衣高血圧の人は自宅で毎日血圧を測定するのが望ましいとされています。

妊娠高血圧症候群の発症時期にも要注意

妊娠中は赤ちゃんの成長と共にママの血液量もどんどん増えていきます。そのため妊娠高血圧症候群は基本的に妊娠末期に近付く程起こりやすい病気です。発症後も妊娠の経過と共に血圧が上がりやすくなるため、早くから発症する人程重症化しやすくなる傾向も。

妊娠34週未満で妊娠高血圧症候群を発症した人は「早発型」と呼ばれ、特に重症化しやすくハイリスク妊婦になります。

妊娠高血圧症候群が引き起こす病気

妊娠高血圧症候群が引き起こす病気には以下のものが挙げられます。

病名 特徴
脳出血 若い人には基本的に起こりにくいものの、脳動脈瘤や脳動静脈奇形の人はクモ膜下出血や脳出血を起こしやすい傾向にある。
子癇 意識消失と痙攣の発作が起きる。
HELLP症候群 溶血性貧血、肝逸脱酸素上昇、血小板低下の症状を引き起こす。
可逆性白質脳症 一時的な視力障害を引き起こす。
急性妊娠脂肪肝 急激に肝不全、腎不全、血液凝固障害などを引き起こすリスクがある。
高血圧緊急症 高血圧のまま血圧コントロールができなくなる。
胎児発育不全 胎児の成長が妊娠数週に合わせた発育過程から遅れてしまう。
常位胎盤早期剥離 正常な位置にある胎盤が出産より早い段階で剥がれてしまう。
子宮胎盤機能不全 胎児への栄養と酸素の供給が不十分になってしまう。
胎児死亡 胎児が子宮内で死亡してしまう。

妊娠高血圧症候群になるリスクが高い人の特徴

妊娠高血圧症候群になるリスクが高い人の特徴は以下になります。

  • 妊娠前から内科疾患(高血圧、糖尿病、慢性腎炎、SLE、高リン脂質抵抗症候群)がある人
  • 肥満体質の人
  • 15歳未満、もしくは40歳以上の人
  • 血圧が120/80 mmHg≧の人
  • 高血圧、または妊娠高血圧症候群になった家族がいる人
  • 多胎妊娠の人
  • 以前の妊娠時に妊娠高血圧症候群になった人
  • 生殖補助医療や卵子提供で妊娠した人

妊娠高血圧症候群の症状

妊娠高血圧症候群は自覚症状のほとんどない病気で、妊婦検診で診断を受けるケースが多いです。稀に【重度のむくみ、頭痛、目の前がチカチカする、お腹の上部が痛み吐き気や嘔吐がある、1週間で1kg以上体重が増える】などの症状が現れる場合があります。

特にお腹の上部が痛み、吐き気や嘔吐がある場合にはHELLP症候群を発症しているケースがありので、これらの症状を感じた際にはすぐに受診しましょう。

妊娠高血圧症候群の原因・診断・検査方法

妊娠高血圧症候群の原因・診断・検査方法
続いては妊娠高血圧症候群の原因や診断方法、検査方法について解説していきます。

妊娠高血圧症候群の原因

妊娠高血圧症候群は、未だに原因が解明されていない病気です。

最近の研究によると胎盤が正常通りに作られていないことで、様々な物質を異常に分泌してしまっていることが原因の1つである可能性が出てきました。その中の物質が血管に作用して、妊娠高血圧症候群を引き起こしているのではないかと言われています。

体質や食生活なども原因として考えられますが、はっきりした原因も分からない状態なので妊娠高血圧症候群になったからといってママは落ち込まないで下さいね。

妊娠高血圧症候群の診断

妊娠高血圧症候群では以下の測定結果が診断の基準となります。

  • 収縮期血圧140mmhg以上(重度の場合は160mmhg以上)
  • 拡張期血圧90mmhg以上(重度の場合は110mmhg以上)
  • 1日当たりの尿たんぱく0.3g以上で尿たんぱくと診断

妊娠高血圧症候群の検査方法

妊娠高血圧症候群の検査には、基本的に血圧測定と尿検査が用いられます。
血圧測定では6時間以上空けて2回以上の測定を行い、両方またはどちらかで妊娠高血圧症候群の診断基準となる血圧が測定された場合に診断を受けます。尿検査ではたんぱく尿の擬陽性が出る場合があるため、精密に検査する場合1日分の尿からたんぱく量を計算する病院もあるようです。

また、症状によっては血液検査を行い貧血や血小板の数値、肝臓・腎臓が正常に機能しているかなど検査を行うケースがあります。妊娠高血圧腎症の場合は週に2回以上の血液検査や、週に3回以上胎児胎盤機能不全の検査を行いママと赤ちゃんの健康状態を管理。可逆性白質脳症が疑われる場合や子癇発作がある場合には頭部MRI検査や頭部CT検査を行うこともあります。

妊娠高血圧症候群の治療方法

妊娠高血圧症候群と診断されたら、ママと赤ちゃんの命を守るため医師の指示に従い適切な治療や管理を行う必要があります。

ごく軽度の妊娠高血圧症候群の場合

ごく軽度の妊娠高血圧症候群が疑われる場合には、外来での経過観察を行うケースがあります。食事療法や自宅での過ごし方などを指導されるケースが多いので、医師の指示に従って妊娠期間を過ごしましょう。

明らかな妊娠高血圧症候群の場合

明らかな妊娠高血圧症候群や重度の妊娠高血圧症候群の場合、入院して徹底した管理を受けるケースが一般的です。

妊娠高血圧症候群の影響でママや赤ちゃんが妊娠の継続に耐えられないと判断された場合、赤ちゃんが出産に耐えられる程度に成長していれば帝王切開や促進分娩で出産することも。その際には早産となるため、新生児医療の設備が整った病院への転院を提案されるケースもあります。

降圧剤の処方は医師の厳重管理の元行われる

通常なら高血圧症には血圧を下げる働きのある降圧剤を処方されることもありますが、妊娠中の降圧剤服用はママや赤ちゃんにとってハイリスクになるケースがあります。ママの血圧が下がることで、赤ちゃんへ酸素や栄養を届けにくくなり低酸素や低栄養を引き起こしてしまうことも。さらに急激に血圧が上昇した場合には、降圧剤のみの治療では症状が改善しないケースもあります。

妊娠中の降圧剤投与は医師の指示・管理の元行われるもの。特に高血圧合併妊娠で、妊娠前から降圧剤を処方されている人は自己判断で服用しないよう注意しましょう。

食事療法は医師の指示に従って行う

高血圧の治療として食事療法が有名ですが、妊娠中に過度の食事制限を行うと健康な妊娠を維持する妨げになってしまうことがあります。
高血圧の食事療法として一般的な水分摂取制限や利尿剤の服用も、妊婦には血栓症を高めてしまうリスクがあります。近年では過度な塩分制限による効果も疑問視されているので、食事療法を行う場合は医師の指示を仰ぎ妊婦であるママに適した食事療法を行いましょう。

妊娠高血圧症候群の最も有効な治療方法は出産

妊娠高血圧症候群は、妊娠の終了と共に症状が収まるケースが一般的です。現在の医学では対処療法はあっても完治させる方法はないとされているため、最も有効なのは出産し妊娠を終了させることです。

そのためママや赤ちゃんが危険な状態になった場合には、帝王切開や促進分娩などが行われます。ママや赤ちゃんに危険がない場合でも妊娠高血圧症候群と診断された場合、正産期を大幅に超過せず早めの分娩を促すケースが多いでしょう。

妊娠高血圧症候群の予防方法

発症の原因が解明されていない妊娠高血圧症候群ですが、予防するためには以下の点に気を付けて妊娠期間を過ごすのが効果的であると言われています。

妊婦健診を受ける

妊娠高血圧症候群は自覚症状がほとんどなく妊婦検診で発覚することが多いです。医師から指示を受けた期間で適切に妊婦検診を受けましょう。妊婦検診を適切に受けることで妊娠高血圧症候群の早期発見にも繋がります。

体重管理を行う

急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群だけでなく妊娠糖尿病など他の病気を引き起こすリスクがあります。特に妊娠中期以降は1週間の内に500g以上増加しないよう気を付け、妊娠前の体重から計算した適切な範囲での体重管理に取り組みましょう。

塩分を抑えた食事を心掛ける

過剰に塩分を制限するのではなく、健康な食生活における減塩に気を付けましょう。2020年に厚生労働省から発表された「日本人の食事摂取基準」では食塩摂取の目標量は18歳以上の女性の場合一日6.5g未満とされています。

単純に塩の摂取量だけでなく、調味料に含まれる塩分などにも気を配って健康な食生活を送りましょう。

十分な休息をとる

妊娠中は無理をせず十分な休息をとりながら過ごすことが望ましいでしょう。横になると子宮や腎臓への血流が良くなり血圧が下がります。午前と午後に1時間ずつ横になって休むと、血圧の上昇を抑えられるのでおすすめです。仕事をしているママには難しいかもしれませんが、なるべく休息を取り無理をしないように過ごして下さい。

妊娠高血圧症候群になった人は産後も注意が必要

妊娠高血圧症候群は遺伝的に高血圧になりやすい人にも起こりやすい病気です。妊娠高血圧症になったママは、加齢と共に高血圧症を発症するケースが珍しくありません。自分が高血圧になりやすい体質だと考え、生活習慣の改善に取り組むと良いですね。

妊娠中は予防や早期発見につとめ、産後も健康的な食生活が欠かせません。妊娠高血圧症と診断された時は、医師の指示にしたがって妊娠期間を過ごしママも赤ちゃんも健康な出産を目指しましょう。

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この記事の監修
エナみらいグループ総院長 宿田 孝弘
宿田 孝弘
エナみらいグループ総院長
札幌・石狩の産婦人科「エナレディースクリニック」の宿田です。母と子に優しいお産、女性が求める医療がエナにはあります。札幌・石狩市での出産や婦人科疾患のお悩みなど、お気軽にご相談ください。