
妊娠の可能性を自宅で手軽に確認できる「妊娠検査薬」。近年ではドラッグストアなどで低価格で購入できるようになり、家庭でセルフチェックするのが一般的になっています。
ただし、使い方や検査のタイミングを誤ると、偽陽性や偽陰性といった誤判定が起こる可能性もあります。
この記事では、妊娠検査薬の正しい使い方や使用時の注意点に加え、検査に適したタイミング、そして偽陽性・偽陰性が起きる主な原因についても詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
【チェックリスト】妊娠検査薬の使用を検討すべきケース
普段の生活を送るなかで、妊娠の可能性を考えたことがある人は少なくないでしょう。しかし、妊娠を望んでいる人以外は「まさか自分が」と不安を感じながらも、検査を先延ばしにしてしまうケースも見られます。
以下のチェックリストに1つでも当てはまる場合は、妊娠検査薬を使用して妊娠の有無を確認してみることをおすすめします。
- 前回の生理が終わってから性行為があった(避妊の有無を問わず)
- 生理が1週間以上遅れている
- 生理ではない少量の経血があったが生理が始まらない
- 強い眠気、吐き気、熱っぽさ、胸の張りなど妊娠初期症状に似た体調の変化がある
避妊をしていても、妊娠の可能性が完全になくなるわけではありません。たとえば、コンドームを使用していても、通常の使用方法では年間で約15%の妊娠率があるとされており、決してゼロとは言い切れないのが現実です。
妊娠を望んでいる方はもちろんのこと、望んでいない場合であっても、上記に1つでも当てはまる場合は、早めに妊娠検査を行うことをおすすめします。
妊娠検査薬の種類

妊娠検査薬にはいくつかの種類があり、それぞれ使用方法や検査できるタイミングが異なります。ご自身の状況に合った検査薬を選ぶためにも、代表的なタイプを確認しておきましょう。
検査時期別の種類
妊娠検査薬は、使用可能な時期に応じて次の2種類に分けられます。
通常の妊娠検査薬
一般的な妊娠検査薬は、生理予定日の1週間後から使用できるタイプのものが多いです。生理予定日1週間後より早く検査を行ってしまうと、尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモン濃度が十分でない場合があり、正しい検査結果が出ない可能性があるため注意が必要です。
ドラッグストアなどで手軽に購入でき、価格も500円前後と比較的安価です。種類も豊富で、使用方法や判定形式の好みに応じて選びやすい点が特徴です。
早期妊娠検査薬
早期妊娠検査薬は、生理予定日から使用できるタイプです。hCGホルモンをより早期に検出できるよう設計されており、妊娠の兆候をいち早く確認したい方に適しています。
早期妊娠検査薬は「体外診断用医薬品」に分類されるため、薬剤師による対面での説明が必要です。そのため、薬剤師が常駐する店舗や時間帯でのみ購入可能です。また、価格は1,200円前後と通常の検査薬よりも高く、種類も限られています。
使用方法別の種類
妊娠検査薬によって使用方法の異なるものがあります。それぞれの特徴を把握し、自分に合ったものを選びましょう。
尿を直接かけるタイプ
検査薬の先端に直接尿をかけるタイプで、日本国内で販売されている製品の多くがこのタイプです。扱いやすく、時間や手間をかけずに手軽に使用できる点が特徴です。
採尿して浸すタイプ
紙コップなどに採尿し、その中に検査薬の先端を浸して判定するタイプもあります。海外製の妊娠検査薬によく見られ、コストパフォーマンスの良さから、妊活中で頻繁に検査を行いたい方に人気があります。
判定方法別の種類
妊娠検査薬の判定結果は、「陽性」「陰性」の形で表示されますが、表示方法には以下の2種類があります。
アナログタイプ(ライン表示)
妊娠検査薬の陽性・陰性を判定する部分を「判定窓」と呼びますが、判定窓に線が表示されるタイプです。
アナログタイプの判定窓には、1本または2本のラインが表示されます。
- コントロールライン:検査が正常に行われたことを示す線
- テストライン(判定ライン):妊娠反応の有無を示す線
妊娠している場合は2本の線、妊娠していない場合は1本のみが表示される形式が多いです。
価格が手頃で入手しやすい反面、ラインが薄く出ると判定が難しくなることもあり、検査時期や尿の濃度によっては判断がつきにくい場合もあります。
デジタルタイプ(文字表示)
判定窓に「妊娠」「陰性」などの文字で判定結果が表示されているタイプです。結果が明確で、アナログタイプよりも短時間で表示される製品が多く、視認性に優れています。
アナログタイプに比べて価格は高めですが、なかにはテストスティックを取り換えて数回使用できる商品もあります。
妊娠検査薬の使い方
妊娠検査薬は、正しく使用しないと正確な結果が得られない可能性があります。検査薬ごとの取扱説明書をよく確認しながら、以下の基本的な使用方法を参考にしてみてください。
検査薬に尿を直接かけるタイプの使い方

尿を直接かけるタイプの妊娠検査薬は、以下の手順で使用します。
- 採尿部に所定の時間尿をかける
- 採尿部にキャップがある場合は装着する
- 判定窓のある面を上にして、水平な場所に置く
- 所定の時間を待ち、判定結果を確認する
尿をかける時間や量は製品によって異なります。多すぎたり少なすぎたりすると正しい結果が出ない場合があるため、取扱説明書を確認のうえ、指定時間を守るようにしましょう。
採尿してから検査するタイプの使い方

紙コップなどに採尿し、妊娠検査薬を尿に浸すタイプは、以下の手順で使用します。
- 清潔で乾いた容器に尿を採取する
- 採尿後すぐに検査薬の先端を尿に浸す
- 判定窓のある面を上にして、水平な場所に置く
- 所定の時間を待ち、判定結果を確認する
使用する容器は、必ず乾いた清潔なものを使用してください。また、採尿後すぐに検査を行わないと、尿の成分変化や雑菌の影響で正確な判定ができなくなる場合があります。
【フライングに注意】妊娠検査薬を使う時期
妊娠検査薬を使用できる時期は、通常タイプであれば「生理予定日の1週間後から」、早期検査薬であれば「生理予定日から使用可能」とされています。
一方で、これらの時期よりも早く検査を行う「フライング検査」をする方も少なくありません。
フライング検査をしたからといって、身体や妊娠自体に悪影響があるわけではありません。実際に、早期に陽性が出たことで風邪薬の服用を控えたり、禁酒・禁煙に踏み切れたという方もいます。
ただし重要なのは、フライング検査では「正確な判定結果が得られない可能性が高い」という点です。
フライング検査をして陰性の結果が出ても、「まだhCGホルモンの量が少なかっただけ」で、妊娠していないとは限りません。妊娠検査薬は規定の時期から使用することを前提としているため、時期が早すぎると精度が低下するのは当然と言えます。
妊娠の有無を気にしながら過ごすよりも、早く検査をしてしまいたいという気持ちは理解できます。しかし、正しく判定できていなければ意味がありません。
フライング検査を行った場合でも、必ず正しい時期にもう一度検査を行い、結果を再確認するようにしましょう
妊娠検査薬の仕組み

妊娠検査薬は、妊娠すると体内で分泌が始まるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを検出することで、妊娠の可能性を判定する仕組みになっています。
排卵された卵子が精子と受精すると、受精卵となり、卵管を通って子宮へ移動します。子宮内膜に着床すると、胎盤のもととなる絨毛(じゅうもう)組織が形成され、この絨毛からhCGホルモンが分泌され始めます。
hCGは血液や尿中に含まれるようになり、妊娠検査薬ではこの尿中のhCG濃度を検出することで、妊娠しているかどうかを確認できます。
一般的な妊娠検査薬の判定基準値はhCGが「50mIU/mL」、早期妊娠検査薬では「25mIU/mL」に設定されています。
hCG分泌量がこれらの基準値に十分に達する一般的な期間が、50mIU/mLなら生理予定日の1週間後、25mIU/mLなら生理予定日というわけです。
hCGは妊娠4週以降に急激に分泌量が増加するため、正常な妊娠であれば、生理予定日から1週間後である妊娠5週目には、尿中hCG濃度が50mIU/mLを下回ることはないとされています。
妊娠検査薬の精度
妊娠検査薬の精度は99%以上と言われています。ただし、所定の方法で正しく保存されていたものを、正しく使用した場合に限られます。
また、妊娠検査薬ではあくまでhCGホルモンが基準値を超えているかどうかを判定しているだけであって、正常妊娠しているかどうかを調べられる訳ではありません。
異常妊娠や薬剤、病気などの影響により偽陽性や偽陰性と判定される場合もあるため、正常に妊娠しているかどうかは医師の診察を受ける必要があります。
病院の妊娠検査と市販の妊娠検査薬の違いは?
病院で行う妊娠検査と市販の妊娠検査薬では、検査精度に大きな差はないと言えます。
そのため、現代では妊娠の可能性がある場合、まずは市販の妊娠検査薬を使って自宅で確認し、陽性反応が出たときや、陰性でも生理が来ないときに病院を受診する流れが一般的になりつつあります。
病院でも妊娠検査のみを行うことは可能ですが、妊娠の確定診断や検査は保険適用外となるため、検査だけを目的に受診するケースは少ないかもしれません。
しかし、病院を受診することで、陽性なら正常な妊娠かどうかを診察してもらえたり、陰性なら生理が遅れている原因を検査してもらえたりするメリットがあります。
妊娠検査薬で偽陽性の判定がでるケース
妊娠検査薬の精度は99%以上と言われていますが、100%ではないため、妊娠していないにも関わらず陽性の判定がでる可能性はあります。また、正常な妊娠でなくても陽性と判定されるケースもあり、これを「偽陽性」と呼びます。
続いては、妊娠検査薬で偽陽性の判定が出るケースについて紹介していきます。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
異所性妊娠(子宮外妊娠)とは、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまうことを言います。特に、卵管などに着床するケースが多く、そのまま成長してしまうと卵管破裂を起こしたり、他の部分に着床して周囲の臓器に支障をきたし、母体の生命を脅かす可能性が高いです。
現代の医学では、異所性妊娠のまま妊娠を継続することはできないため、妊娠を終了させる必要があります。
胞状奇胎
胞状奇胎とは、受精卵が着床した際に絨毛が異常増殖してしまうことを言います。胞状奇胎の場合、遺伝物質を持たない卵子が精子と受精しているケースや、1つの卵子に複数の精子が受精しているケースなど、受精卵がそもそも異常を起こしているケースが多く正常に発達できないことが多いです。
合わせて、母体にも妊娠性絨毛性腫瘍や絨毛ガンなどの合併症を起こすリスクが非常に高いため、妊娠の継続は不可能とされます。胞状奇胎と診断された場合、速やかに妊娠を終了し、増殖した絨毛細胞を除去する処置が必要です。
流産
受精卵が一度着床しても、その後に定着せず流産してしまうケースは珍しくありません。このようなごく初期の流産は「化学流産」と呼ばれ、明確な原因を特定することは困難です。
一度でも着床が起これば、微量でもhCGホルモンが分泌されるため、妊娠検査薬で陽性反応が出ることがあります。その後、受精卵が成長できず自然に排出された場合でも、検査薬の反応によって妊娠していたことを初めて知るケースも少なくありません。
化学流産の多くは受精卵の染色体異常が原因と考えられており、本来であれば通常の生理として気づかずに終わることも多いものです。しかし、近年は手軽に購入できる妊娠検査薬や早期検査薬の普及により、より早い段階で妊娠を認識できるようになったため、化学流産に気づく女性が増えています。
不妊治療による排卵誘発剤の影響
不妊治療では、hCGホルモンを含む排卵誘発剤を投与して妊娠を促すケースがあります。これにより、妊娠をしていなくても、排卵誘発剤に含まれているhCGホルモンが妊娠検査薬に検出され偽陽性の判定が出てしまう場合があります。
ガンの影響
肺がん、卵巣がん、子宮頸がんなど一部の悪性腫瘍は、hCGホルモンを異常に分泌することがあります。これにより、妊娠していないにもかかわらず陽性判定が出ることがあります。
病気の影響
血尿やタンパク尿の場合、妊娠検査薬で正常に検査ができないことがあります。血尿やタンパク尿を起こしやすい膀胱炎や糖尿病などを患っていると、妊娠検査薬で正常に判定がでず偽陽性の判定がでることがあります。
妊娠検査薬で偽陰性の判定がでるケース
妊娠しているにもかかわらず陰性と判定される「偽陰性」についても知っておくとよいでしょう。
以下のケースでは偽陰性の判定がでやすい傾向にあると考えられます。
尿が薄い場合
多量に水分を摂取した後の尿は、検出されるhCGホルモンが薄まってしまう可能性があります。そのため、尿が薄い状態で検査を行うと、実際には妊娠していても偽陰性の判定が出ることがあります。
検査の時期が早すぎる場合
hCGホルモンが十分に分泌される前に検査をすると、妊娠していても陰性になることがあります。特に、生理予定日前に検査を行う「フライング検査」ではこのリスクが高まるため注意が必要です。
フライング検査で陰性だった場合も、生理予定日から1週間後を目安に再検査を行いましょう。
多胎妊娠の場合
妊娠検査薬はhCGホルモンが多すぎる場合に、偽陰性の判定がでてしまうことがあります。双子や三つ子などの多胎妊娠では特にhCGホルモンの分泌量が多くなるため、偽陰性の判定がでやすい傾向にあります。
妊娠検査薬で正確な判定をするためのポイント
妊娠検査薬で正しい結果を得るためには、以下の3つのポイントに注意しましょう。
朝一番の尿で検査する
多くの妊娠検査薬は、どのタイミングでも使用できますが、尿の濃度が薄いと「偽陰性」のリスクが高まる場合があります。そのため、もっとも濃度が高い「朝一番の尿」で検査するのがおすすめです。
採尿後はすぐに検査をする
紙コップなどで採尿してから検査を行う場合は、採尿後すぐに検査することが大切です。時間が経つと尿に雑菌が繁殖したり、性質が変化したりして、正確な結果が得られなくなる可能性があります。必ず清潔な容器で採取し、速やかに使用しましょう。
妊娠検査薬を適切に保管する
妊活中などで妊娠検査薬をまとめ買いしている人は、保管方法にも注意が必要です。
- 直射日光を避けて常温で保管する
- 使用期限を毎回確認する
- 開封済みの検査薬は長期間放置しない
特に、一度開封した検査薬は、採尿部に汚れが付着している可能性もあるため、利用は避けましょう。正確な検査結果を得るためには、衛生的かつ使用期限内のものを使うことが重要です。
妊娠検査薬を使用した後に病院を受診するタイミング
妊娠検査薬で妊娠検査を行った場合、陽性の判定がでた時にはもちろん、陰性の判定であっても病院を受診した方がよいケースがあります。
続いては、妊娠検査薬を使用した後に病院を受診する適切なタイミングについて解説します。
陽性の判定が出た場合
通常の妊娠検査薬で陽性判定が出た場合、速やかに薬の服用や飲酒、喫煙などをやめて、1週間を目安に病院を受診しましょう。
早期妊娠検査薬で陽性の判定が出た場合は、生理予定日の1週間後を目安に受診するのがおすすめです。
この時期はまだ胎嚢や心拍の確認ができない場合もありますが、正常妊娠かどうかを早期に確認することが非常に重要です。
SNSなどでは「胎嚢や心拍が確認できる8週以降に受診したほうがよい」といった情報も見られますが、異所性妊娠(子宮外妊娠)の場合は、受診が遅れるほど母体にとって危険な状況になる可能性があります。
お仕事をされていて何度も受診するのが負担に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、ご自身の体を守るためにも、できるだけ早めに医療機関を受診してください。
陰性の判定が出た場合
陰性の判定が出た場合、1~2週間様子を見てもよいでしょう。生理が少し遅れてしまっている可能性があります。
陰性だった場合でも、まずは1〜2週間様子を見てみましょう。単に生理が遅れているだけというケースもよくあります。
しかし、2週間経っても生理が始まらない場合は、速やかに病院を受診することをおすすめします。妊娠検査薬の結果が偽陰性だった可能性や、その他の病気が隠れている可能性もあるためです。
まとめ
今回は妊娠検査薬の使い方について紹介してきました。
近年、精度の高い妊娠検査薬を手頃な価格で入手できるようになり、妊娠にいち早く気づけるようになりました。一方で、気が急いて規定のタイミングよりも早く検査をしてしまうフライング検査や、適切な方法で検査を行わなかったことが原因で、偽陽性・偽陰性といった誤った判定が出てしまうケースも少なくありません。
市販の妊娠検査薬は、あくまでhCGホルモンの有無を確認するためのものであり、妊娠の確定診断を行うものではないという点を改めて意識しておくことが大切です。
妊娠の可能性がある方は、検査薬を正しく使用したうえで、必要なタイミングで医療機関を受診し、正常な妊娠かどうかを確認しましょう。
